公開日:2022.11.10

更新日:2022.11.30

環境問題の国際的な取り組みについて

環境問題の国際的な取り組みについて

環境問題は、一つの国だけが取り組んでも解決できません。地球規模で取り組む必要があります。
そのため、世界の国々は、国連や国際機関を中心にいろいろな会議を開いたり、条約を作るなどして、地球環境問題に取り組んでいます。ここでは、リサイクルについて、国連を中心にどんな取り組みが行われてきたのかを紹介します。

目次

国連の会議

国連などでは、国際会議を開いて、地球環境を守るための行動計画や国際条約を決めています。
これらの行動計画や条約に署名した国は、自分の国の法律や政策もこれに合わせなければなりません。

1972年 国連人間環境会議(ストックホルム会議)

環境問題が初めて取り上げられた国連の会議。先進国の公害が問題になり、環境問題には国際的な取り組みが必要だということを確認した会議です。

1987年 国連環境と開発に関する世界委員会

環境破壊が世界的レベルで進むなかで、「持続可能な開発」という考え方が提言されました。この考え方は、その後の世界の開発・発展の基礎となりました。廃棄物を減らし、リサイクルをすすめることが大きな課題となりました。

1992年 環境と開発に関する国連会議(地球サミット・リオデジャネイロ)

政府代表だけでなく、産業団体、市民団体も参加して、環境問題について話し合われました。「アジェンダ21」という行動計画を採択。これは、21世紀に向けた持続可能な開発を実現するための、人口、貧困などの社会的・経済的な課題、大気・森林・気候・水・廃棄物などの課題に関するプログラムです。気候変動枠組条約 、生物多様性条約も作られました。

2015年 「持続可能な開発目標(SDGs)」:Sustainable Development Goals

「国連持続可能な開発サミット」で採択されました。国連加盟193か国が2016から2030年の15年間で達成するために掲げた17の目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されています。全世界の全ての人たちが持続的に人らしく生きることができ、「誰ひとり取り残されない」ことを目指し、先進国と途上国が一丸となって達成すべき目標です。
日本では、全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」の下で、2016年12月に今後の日本の取組の指針となる「SDGs実施指針」を決定し、2018年6月には「拡大版SDGsアクションプラン2018」を決定しました。

国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)

大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極の目標として1992年に採択された「国連気候変動枠組条約」(UNFCCC)に基づき、1995年から毎年開催されている年次会議

1997年 国連気候変動枠組条約第3回締約国会議(地球温暖化防止京都会議COP3)

この会議では、地球温暖化防止のために「京都議定書」という温室効果ガス(CO2、CH4、N2O)の排出量を減らす目標を決めました。日本では温室効果ガスの排出量を、2008年から2012年の5年間で1990年の値よりも6%削減することにしました。この目標を達成するためにも、省エネやリサイクルがさらに重要な課題となりました。

 

●地球温暖化のしくみと温室効果ガスとは?
太陽光線は大気を通過して、熱(赤外線)を吸収して地表をあたためます。地表が冷えると赤外線を大気中に放射します。大気中の二酸化炭素やメタンなどの気体が、地表から放射された赤外線を吸収し、再び放射して地球を温室のように暖めています。この現象を温室効果といい、これによって地球の表面温度は平均15℃程度に保たれています。このような温室効果をもたらすガスは、二酸化炭素、フロン、メタンなど50種以上あり、温室効果ガスと呼びます。
地球温暖化とは、地球の表面温度が徐々に高くなっていく現象です。

温室効果ガスイメージ

(出典:財団法人 省エネルギーセンターHP)

2015年 国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)「パリ協定」

新たな法的枠組みとなる「パリ協定」を含むCOP決定が採択されました。「パリ協定」は気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定(合意)です。196カ国の加盟各国が、温室効果ガス(主に二酸化炭素)の 削減目標を作成・提出・維持する義務と、当該削減目標を達成するための国内対策を施す義務を負います。
日本では、中期目標として、2030年度の温室効果ガスの排出を2013年度の水準から26%削減することが目標として定められました。

2019年 国連環境総会 (UNEA4 )

閣僚宣言「環境課題と持続可能な消費と生産のための革新的な解決策」8項目が採択されました。このうち、プラスチックについては、「2030 年までに使い捨てプラスチック製品を大幅に削減することを含む、プラスチック製品の持続不可能な使用と処分によって引き起こされる生態系への被害に取り組むとともに、適正な価格で環境に優しい代替品を見つけるために、民間部門と協働」が採択されました。
また、「海洋プラスチックごみ及びマイクロプラスチック」に関する決議、「使い捨てプラスチック汚染対策」に関する決議、「持続可能な消費と生産の達成に向けた革新的な筋道」に関する決議など合計23本の決議が採択されました。

G7、G8、G20の会議

G7(G8)、G20は、毎年、国際会議を開催し、いろいろな課題について議論しています。
G7:フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ
G8:G7にロシアを加える
G20:アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、日本、メキシコ、韓国、南アフリカ共和国、ロシア、サウジアラビア、トルコ、英国、米国の19ヶ国に加え、欧州連合(EU)

2004年 G8シーアイランドサミット

日本は「3Rイニシアティブ」を提唱。2005年4月の「3Rイニシアティブ閣僚会合」(東京)以降、「3Rイニシアティブ」が本格的に開始され、日本は「3Rを通じた循環型社会の構築を国際的に推進するための日本の行動計画」(ゴミゼロ国際化行動計画)を発表し、世界に3Rによる環境への取り組みを提案しています。

2007年 「21世紀環境立国戦略」

これは、日本が閣議決定した政策ですが、内容は、「アジアでの循環型社会の構築に向けた取組」や「日本提唱の3RイニシアティブのG8での推進」などを柱としています。近年のアジアの経済成長の中で、持続可能な資源循環について各国に呼び掛け、「東アジア循環型社会ビジョン」の策定により東アジア全体で適正な資源循環の実現を目指そう、と提案しています。

2015年 「G7エルマウサミット」

「海洋ごみ問題に対処するためのG7行動計画」を策定しました。首脳宣言において、海洋ゴミが世界的な問題であることを認識しました。

2016年 「G7富山環境大臣会合」

「海洋ごみ問題に対処するためのG7行動計画」について再確認しました。各国の状況に応じた優先的施策の実施にコミットしました。日本の優先施策は海洋ごみのモニタリング手法の標準化等です。

2016年 「G7伊勢志摩サミット」

首脳宣言において、G7 各国が海洋ゴミに対処することを再確認しました。

2017年 「G7ボローニャ環境大臣会合」

「海洋ごみ問題に対処するための G7 行動計画」をさらに実施する決意を表明しました。

2017年 「G20ハンブルクサミット」

首脳宣言において、 G20 サミットでは初めて海洋ごみが取り上げられました。

2018年 「G7シャルルボワサミット」

健全な海洋及び強靱な沿岸部コミュ ニティのための「シャルルボワ・ブループリント」を承認しました。この中で、海洋プラスチック廃棄物と海洋ごみに関しては、過去のG 7 のコミットを基礎に、陸 ・海域でプラスチックヘのライフサイクルアプローチを取り、より資源効率的で持続可能なプラスチック管理に移存することにコミットしました。
「G7 海洋プラスチック憲章」を承認しました(日本とアメリカは憲章には参加しませんでした)。

2019年 「G20長野環境大臣会合」

各国が自主的な対策を実施し、その取組を継続的に報告・共有する実効性のある新しい枠組みである「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」に合意しました。
プラスチックごみ対策が待ったなしの課題であり、スピード感をもって具体的な対策をとる必要があることを確認・共有できました。

2019年 「G20大阪サミット」

G20大阪首脳宣言の中で2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的汚染をゼロにまで削減することを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が合意されました。

国際的な規格

ISO14000シリーズ

「地球サミット」のあと、世界中の国で、環境問題への真剣な取り組みが始まりました。いろいろな分野で、環境保全を考えた産業活動や企業活動に取り組む動きか始まりました。これを環境管理(環境マネジメント)、その内容を定期的に点検・検査することを環境監査といいます。
しかし、みんなが違うやり方で環境管理や環境監査をしていたのでは、どちらが優れているか、比べることもできません。
そこで、国際的な産業活動や製品に関する基準を設ける機関、国際標準化機構(ISO)は、1996年にISO14001という環境マネジメントシステムを決め、環境管理・監査については14000シリーズという規格を決めました。これにより、どこの国の企業でも、環境に配慮しているかどうか、どの製品が国際的な規格を満たしているかがわかるようになりました。
ISOの日本国内機関、日本規格協会は、ISO規格に対応するJIS規格を設けて、日本の製品が環境保全の上で国際的にも通用するようにはかっています。

14000シリーズの規格と名称

ISO14000~14009環境管理システム
ISO14010~14019環境監査
ISO14020~14029環境ラベルおよび宣言
ISO14030~14039環境パフォーマンス評価
ISO14040~14049 ライフサイクルアセスメント
ISO14050~14059用語と定義

環境への影響をはかる国際的な手法

LCA(ライフサイクルアセスメント)

ISO(国際標準化機構)は、環境保全への貢献度をあげるために、現在もその方法をさまざまな角度から検討しています。その一つがLCA(ライフサイクルアセスメント)という方法です。
LCAというのは製品やサービスの環境への影響を評価する手法です。一つの製品の環境への影響を見るとき、原料となる地球資源をとり出してから、製造し、使用して、廃棄するまでというライフサイクル全体を通して見なければ、どの方法が最も環境への影響が少なくてすむかはわからないという考え方に基づいています。
たとえば、製品をリユースするのと、リサイクルするのとでは、リユースするほうが環境に及ぼす影響は少ないように見えます。しかし、リユースするためには運搬に使う車の燃料や、製品を洗ったりきれいにするための水や薬品をたくさん使います。このように、LCAという手法をとることにより、大気への影響、水質への影響など、すべての面から見て、どちらが環境への影響が少ないかを比べて、環境への影響が少ないほうを選べるという利点があります。この手法については、今も研究が続けられています。

国連大学が提唱するゼロエミッション計画

ゼロエミッションとは

「エミッション」とは、英語で排出の意味です。産業の製造工程から出るゴミを、別の産業の再生原料として利用する「廃棄物ゼロ」の生産システムをつくろうというのが基本的な考え方です。地球サミットで「持続可能な開発」が採択されたのを受けて国連大学が提唱し、1995年4月からスタートしました。東京都の「ゼロエミッション東京戦略」をはじめとした各自治体や、また多くの民間企業でも取り組みが行われています。

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