公開日:2022.11.08

更新日:2022.12.20

プラスチックとグルメ

「グルメなおれは知っている。プラスチックが食べもののおいしさをささえていることを」。
そう語る主人公がおとずれたのは、とある家庭料理りょうりの店。そこで男が見たものは…。
食べ物とプラスチックの、切っても切れない関係かんけいが次々とび出します。なるほどがいっぱいです!

おいしそうな食品サンプルが食欲しょくよくをそそる!

おいしいランチが食べたくて、お店をさがしているひとりの男。

 

はたしてかれは、おいしいランチが食べられるのでしょうか。

プラスチックにはいろいろな種類しゅるいがある

「グルメなおれは知っている。プラスチックが、おいしさをささえていることを。さて、今日は何を食べようか…」。

 

そう言って、商店街しょうてんがいを歩いている一人の男がいます。

 

「そうだ。本当にいい店は、こんな路地ろじにあるんだ…」とひとりごとを言いながら、お店をさがしています。

 

そして、あるお店の前に立ち止まりました。

 

「ピンときたぞ!かくれてきな家庭料理りょうりの店であることはまちがいない」。

 

どうやら、気になるお店と出会であえたようです。

 

店の前には、ランチのメニューが展示てんじしてあります。

 

「ん? お店のイチオシ、海鮮かいせんちらしどん。これはおいしそうだ」

 

しかし、よく見ると、男はあることに気づきました。

 

「これは、食品サンプルか! よくできている」

食品サンプルはプラスチック

海鮮丼

食品サンプルは、ポリ塩化えんかビニルというプラスチックの一種いっしゅを、材料ざいりょうとして作られています。

 

ポリ塩化ビニルには、

 

適度てきど弾力だんりょくがある

透明性とうめいせい着色性ちゃくしょくせいにすぐれている

こまやかな加工がしやすい

 

といった、さまざまな特徴とくちょうがあります。

 

「ポリ塩化ビニルの特徴を最大限さいだいげんにいかした食品サンプルをおくことで、料理への期待感きたいかんを高めているんだ。よし、この店にしよう」

 

そう言うと男は、店の中に入っていきました。

食品ラップが料理のおいしさをキープ!

「いらっしゃいませ。おすきなせきにどうぞ〜」。お店のドアをあけて中に入ると、お店の人の声が聞こえます。

メニューには、いろいろな料理りょうりの名前がならんでいます。

 

「どれどれ。おお、ランチメニューが豊富ほうふだ! とれたて新鮮・海鮮ちらし丼に、特製とくせい野菜やさいカレー。カレーもいいな〜。…いやいや、ここでめいってはいかん。今日は、海鮮ちらし丼だ!」

 

 

男「すみません、海鮮ちらし丼をください」

 

店の人「海鮮ちらし丼ですね。よろしければ、あちらの小鉢こばちもどうぞ。どれも100円です。ご自由におえらびください」

 

「ここは、小鉢を選べるのか。昔なつかしいスタイルだ。では、ひとつもらっておこう」。そう思い、男は小鉢を選びはじめました。

 

「おお、いろいろな小鉢があるなあ」。そう言って、男はキムチの小鉢を手に取りました。そして、何かに気づいたようです。目が止まったのは、小鉢の表面をおおっている、食品ラップのようです。

においを通さないポリ塩化ビニリデンの食品ラップ

ポリ塩化ビニリデンの食品ラップ

男「キムチか。さすがだ。ポリ塩化えんかビニリデンの食品ラップを使っている」

 

ポリ塩化ビニリデンには、

 

・においや、酸素さんそを通しにくい

乾燥かんそうふせ

ねつに強い

 

という特徴とくちょうがあります。

 

「だから、キムチのようなにおいの強い食べ物には最適さいてきだ。しかも、キムチの乾燥を防いで、みずみずしさをたもつこともできる」と、男。

 

 

「うーん、この店、わかっているな…」。と、感心しきりです。

うつわにくっつくポリ塩化ビニルの食品ラップ

ポリ塩化ビニルの食品ラップ

キッチンのほうから

 

「はい、かどの山田さん、きつねうどん」という声が聞こえてきました。

 

そして店員さんが、食品ラップをしたうどんを配達はいたつしようとしています。

 

 

男「うん? なんだ、ここは出前もやっているのか」

 

 

うどんをチラッと見た男が、つぶやきます。

 

「ここでも食品ラップが使われている。この素材そざいは、ポリ塩化ビニルの食品ラップだな」。と、先ほどのポリ塩化ビニリデンの食品ラップとはちがうラップの名前を口にしました。

 

ポリ塩化ビニルの食品ラップには、

 

・よく伸びる

うつわにくっつきやすい

・熱に比較的ひかくてき強い

 

という特徴とくちょうがあります。

 

男「しるもこぼさないので、出前にはぴったりだ」

酸素さんそを通すポリエチレンの食品ラップ

ポリエチレンの食品ラップ

男はふたたび、小鉢えらびをはじめます。

 

「さて、取る小皿は何にしようか…」。そして、野菜やさいの小鉢を見て、男はまた何かを発見したようです。

 

「野菜の小鉢には、ポリエチレンの食品ラップを使っている」。

 

ポリエチレンの食品ラップには、

 

・ほかのプラスチックと比べて酸素さんそを通しやすい

・他の素材のラップとくらべて安価あんか

 

という特徴があります。

 

男「ポリエチレンの食品ラップは、酸素さんそを通しやすいが、それだけに、呼吸をしている野菜にはちょうどいいんだ」

 

「食品ラップは、食べ物の保存ほぞんにはかせないプラスチックなんだ」と言って、「ようし、これにしよう」と男が選んだのは、野菜の小鉢でした。

 

男「食品ラップのおかげで、ほら、見事に鮮度せんどが保たれている!」

やわらかな多層たそう構造こうぞうのプラスチック

多層構造のプラスチック容器

野菜をおいしく食べるために、男は、ドレッシングを選びはじめました。

 

男「ドレッシングは、ここはオーソドックスに、マヨネーズでいくか」。そう思って、マヨネーズを手にした男。ここで、また何かを発見したようです。

 

「マヨネーズの容器ようき、これもプラスチックだ。れにくくて軽く、中身をしぼり出しやすい、適度てきどなやわらかさがある。これは、プラスチックを多層化たそうかして、酸素さんそを通さないようにすることで、中身の品質ひんしつを保っている」と、男は思いました。

 

多層たそう構造こうぞうのプラスチック容器には、

 

素材そざいのことなるプラスチック素材を重ねることで、多様な機能きのう実現じつげん

鮮度せんどを保ち、賞味しょうみ期間を延長えんちょう

 

という特徴があります。

ポテトチップスの袋にも多層構造のプラスチックが

ポテトチップスの袋の高額顕微鏡断面写真

ポテトチップスのようなスナック菓子がしふくろにも、プラスチックを多層化して、酸素さんそや光から食品を守る方法が使われています。

 

男「これによって、げたてそのままの、パリパリポテトチップスを、いつでも食べられるようになったんだ。…ああ、いとしのポテトチップス、食べたい…! いや、今はこの目の前の食べものに集中するんだ!」

 

そう思って、男は「いただきます」と言って、野菜を食べはじめました。

農業用ハウスもプラスチック

農業用ハウスのフィルム

男「うーん、このトマト、うま〜い!まるで、高原のさわやかな風が、口の中に広がるようだ!」そして、トマトを食べながら、男はまた何かに気づいたようです。

 

男「いや、まてよ…。このトマトの味わいは、ハウス栽培さいばいされたトマトだな!」

 

 

農業用ハウスに使われている素材は、プラスチックです。新鮮な野菜を育てるのに、ハウス栽培はかかせません。

 

一般的いっぱんてきには「ビニルハウス」とよばれていますが、正確せいかくには「プラスチックハウス」とでも言うべきかもしれません。

 

農業用ハウスに使われるフィルムの素材には、

 

・ポリ塩化ビニル

・ポリオレフィンフィルム

 

の2種類しゅるいのプラスチックが中心です。そのほかにも、

 

・ポリエチレン

・フッ樹脂じゅし

・ポリエステル

 

など、いろいろな素材が使われています。

 

なぜ、プラスチックのいろいろな素材が使われているのでしょうか。それは、目的もくてきに合わせて素材を選び、組み合わせることで、栽培する野菜に合わせててきした状態じょうたいを作り出すためです。

 

男「プラスチック素材、太陽光線、水分、養分ようぶん。それらが、たがいのよさを引き出しあって、この新鮮でおいしい野菜が生まれるんだ」

漁業ぎょぎょうになくてはならないプラスチック!

男がそんなことを考えながら野菜を食べているあいだに、お目当ての海鮮ちらし丼ができあがったようです。

 

お店の人「お待たせしました。海鮮ちらし丼です」

 

男「おお〜、この豊富ほうふ魚介類ぎょかいるい。いそのかおりがただよってくるような、みずみずしさだ!」

あみやロープなどの漁具ぎょぐもプラスチック

目の前に登場した海鮮ちらし丼を見て、男はまた、なにか思ったようです。

 

「この海鮮ちらし丼の魚を取るのにも、プラスチック素材はなくてはならないものだ。漁具ぎょぐあみ、ロープ、ブイ、すべてプラスチックせいだ。漁師りょうしさんとプラスチックに感謝かんしゃして、いただきます!」

 

男は、おいしそうに海鮮ちらし丼を食べはじめました。

クーラーボックスもプラスチック

男「う〜ん、とれたての味、うまい! 新鮮さを保ったまま運ばれてきた、最高さいこうの海の幸だ!」

 

ここで男は、また何か気がついたようです。

 

「とれた魚の鮮度を保つためには、発泡はっぽうポリスチレンのクーラーボックスも欠かせない。発泡ポリスチレンは熱を伝える性質が小さいから、外気温の影響えいきょうを受けにくい」

 

発泡ポリスチレンのクーラーボックスは、クーラー内部の保冷ほれい温度も外につたわりにくいので、保冷効果こうかが高いという特徴があります。魚介類を新鮮なまま運ぶのに、最適な素材、というわけです。

 

「うまい!ここでもプラスチックがおいしさを支えている。ありがとう、プラスチック!」

料理になくてはならないプラスチック!

プライパンのフッ素樹脂コーティング

後ろのテーブルに、女性じょせいのお客さんがやってきました。彼女は、しょうがき定食を注文したようです。

 

男は、その声を聞いて「しょうが焼きか…」とつぶやいたあと、また、何か思ったようです。

 

男「豚肉をのせている食品トレーは、もちろん、プラスチック素材だ。そしてわすれてはいけないのが、肉をくフライパンだ。フッ樹脂じゅしというプラスチックを、表面にはりつけているから、こげつかないんだ!」

 

ジューッと肉を焼く音がして、店内にしょうが焼きのいいにおいがただよってきました。

 

男「あー、この音とにおい!しょうが焼き、最高!海鮮ちらし丼もおいしかったけれど、今度くるときは、ぜったいしょうが焼きにしよう」

レトルト食品の袋もプラスチック

レトルト食品の袋

男「ごちそうさまでした」。海鮮ちらし丼を食べおわった男は、席を立ちました。

 

お店の人「ありがとうございます。海鮮ちらし丼と小鉢1つで、800円になります」

 

会計をしようとしたら、男は何やら、レジの横にある、レトルトのカレーを発見しました。

 

「なんだ? お店特製野菜カレーのレトルトもあるのか!」と、男はおどろきました。

 

「このレトルト食品の袋も、プラスチックでできている。空気や水分、光をしゃだんし、内部の食品を密閉みっぺいしている。それによって、長期保存を可能にしている。食生活に役立ち、食品ロスの削減さくげんにも貢献こうけんしているんだ」

 

 

男「すいません、このお店特製野菜カレーを、もう一つください」

 

 

お店の人「はい、ありがとうございます」

 

こうして店を出た男。「うん、おれの直感に、まちがいはなかった」と、大満足まんぞくのようすです。

 

「この店、おいしさとプラスチックの関係かんけいをよくわかっている。ここにして大正解せいかいだった。あー、うまかった!」

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