公開日:2022.11.08

更新日:2022.12.20

ペットボトル6つの謎

見慣みなれたペットボトル。しかし、ペットボトルにはさまざまななぞかくされています。

ペットボトルにいろいろな形があるのはなぜだろう?ペットボトルはどうやって作る?など、ペットボトルの製造せいぞうかんする謎から、なぜキャップとボトルを分けるの?回収かいしゅうされた使用みペットボトルはどうなるのか?といった、ペットボトルのリサイクルにかんする謎まで。

今日は、ペットボトルに隠された謎をき明かしていきましょう。

謎1 ペットボトルにいろいろな形があるのはなぜだろう?

謎1

よく見ると、ペットボトルには形がちがうものがあります。みなさんは、気がついていましたか?これは、どうしてでしょうか?

 

ペットボトルをよく見てみると、四角いでこぼこがついたものや、でこぼこのない、プレーンな形状けいじょうのものがあります。そして、フチの部分が白いものもあります。

 

さまざまな形のペットボトルを見ていき、そのちがいを知りましょう。

耐熱たいねつ用ペットボトル

耐熱用ペットボトル

この四角いでこぼことしたペットボトルは、耐熱

たいねつ

用ペットボトルです。

 

耐熱用ペットボトルは、お茶やジュースなどを、高熱

こうねつ

殺菌

さっきん

した状態

じょうたい

充填

じゅうてん

し、その後、冷却

れいきゃく

するタイプの飲料

いんりょう

に使用されるペットボトルです。

 

そのため、ボトルが肉厚

にくあつ

で、強度のある設計

せっけい

になっています。

 

四角い形などででこぼこした形は、冷却して温度が下がるときに発生する「減圧」の力を吸収するために付けられている形なのです。このでこぼこを「減圧吸収パネル」と、いいます。

 

耐熱用ペットボトルは、口の部分が白くなっています。これは、飲み口部分に耐熱性を持たせるために、熱処理

ねつしょり

をして結晶化

けっしょうか

させているためです。つまり白い部分も、ボトルと同じ素材

そざい
なのです。

耐熱用ペットボトルを実験じっけんでたしかめよう

お茶の入ったペットボトル

では、耐熱用ボトルはほんとうに熱に強いのか、実験

じっけん

して

たし

かめてみましょう。

 

でこぼこがあるペットボトルと、でこぼこがないペットボトルのそれぞれに、熱いお茶を入れます。そして、キャップをします。

しばらくすると、でこぼこがないボトルは内側

うちがわ

がへこんでしまいました。

 

しかし、でこぼこのある耐熱ボトルは、形がそのままです。へこんだようには見えませんね

耐圧たいあつ用ペットボトル

耐圧用ペットボトル

では、でこぼこのない丸いプレーンなタイプのペットボトルには、どんな特徴があるのでしょうか?

 

このペットボトルには、外側

そとがわ

に広がろうとする力に強い、耐圧

たいあつ

用ペットボトルとよばれるものです。

 

おもに、炭酸飲料

たんさんいんりょう

などに使われます。

耐圧用ペットボトルを実験でたしかめよう

耐熱用耐圧用ペットボトル

こちらも、実験でためしてみましょう。

 

まず、重曹

じゅうそう

とクエン

さん

を用意します。

 

重曹とクエン酸を同じ量だけまぜ合わせ、水を加えます。すると、二酸化炭素が発生します。この重曹とクエン酸をまぜ合わせたものを、ペットボトルに少量

しょうりょう

入れて、観察

かんさつ
してみましう。

 

まずは、でこぼこのあるタイプのペットボトルに重曹とクエン酸を入れてみて、キャップをします。しばらくすると、ペットボトルが

ふく

らんでしまいました。




そこ

も膨らんで、ななめに

かたむ

いてしまいました。

 

ではこちらの、丸い耐圧用ペットボトルはどうでしょうか。

 

丸いペットボトルは、重曹とクエン酸をいれても、見た感じでは変化

へんか

はありません。底も、変化はありません

この結果

けっか

から、丸いプレーンなペットボトルは、膨張

ぼうちょう

しようとする内側

うちがわ

からの力に強い、耐圧用ペットボトルだということがわかりました。

 

そして、このロケットのような

そこ

の形は、圧力

あつりょく





えて、しかも立ちやすいように、工夫

くふう

された形をしているのです。

 

耐熱用ペットボトルと、底の形を見くらべると、そのちがいがよくわかります。

 

耐熱用ペットボトルと耐圧用ペットボトル。それぞれ、中に入れる飲料

いんりょう

性質

せいしつ

に合わせて、形が



えられていたのです。

耐熱圧用ペットボトル

耐圧熱用ペットボトル

近年では、耐熱と耐圧の両方

りょうほう

の特徴を





そな

えた、「耐熱圧用ペットボトル」も開発されています。これは、果汁

かじゅう

入り炭酸飲料などに使われています。

 

この耐熱圧用ペットボトルは、ボトルの丸い形と、白い口で見わけることができます。

無菌充填むきんじゅうてん用ペットボトル

無臭重鎮用ペットボトル

では、このペットボトルはどうでしょうか?

 

口は白くないので、耐熱ではありません。また、きれいな丸い形でもないので、耐圧でもない形をしています。

 

このペットボトルには、どんな特徴があるのでしょうか。

 

これは、「無菌充填

むきんじゅうてん

用ペットボトル」とよばれるペットボトルです。おもに、ミネラルウォーターなどで使われています。

 

高温殺菌をせず、炭酸飲料を入れることもありません。そのため、

うす

く、軽く作ることができます。

 

薄くても、強さを

たも

つための、

みぞ

やへこみがあります。材料が少なくてすむので、環境

かんきょう

にやさしいペットボトルだといえます。

謎1のこたえ

謎1の答え

ペットボトルにいろいろな形があるのは、中に入れる飲料の性質に合わせるためだということがわかりました。

ペットボトルの形には、一つ一つ、ちゃんと意味があるのです。

謎2 ペットボトルはどうやって作る?

謎2

ペットボトルは、どうやって作られているのでしょうか。

石油からポリエチレンテレフタレート(PET)をつくる

ポリエチレンテレフタレート

ペットボトルの原材料は、石油から作られた「ポリエチレンテレフタレート」というプラスチックです。

このポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)の、英語えいご頭文字かしらもじをとって、「PET」、つまり、ペットボトルとよばれています。

プリフォームからボトルをつくる

プリフォーム


原料

げんりょう

をとかして圧力

あつりょく

をかけ、金型

かながた

に流しこみます。そして、冷却

れいきゃく

した後に取り出すと、ペットボトルの原形という意味の「プリフォーム」ができます。

 

次に、プリフォームからボトルをつくります。

 

プリフォームを、およそ100度まで加熱

かねつ

します。そして、ボトル用の金型に入れます。

たて

、横に引きのばし、空気を入れて

ふく

らまします。





やした後に金型を開いて、ボトルを取り出して、完成

かんせい

です。

謎2のこたえ

謎2の答え

ペットボトルはこのように、熱を加えて自由に形を変えることができる、プラスチックの性質を利用りようして作られています。

謎3 ペットボトルのラベルはどうやってりつけている?

謎3

さぁ、ペットボトルができました。

 

…でも、なにか、ものたりないと思いませんか?

 

そうです、ラベルがありませんね。

 


市販

しはん

されているペットボトル飲料には、ラベルがつけられています。

 

中には、ボトルの形に合わせて、ぴったりと貼り付けられているラベルもありますね。こういったラベルは、どうやって



りつけているのでしょうか。

 

この、ぴったりとペットボトルに貼りついたタイプのラベルは、熱を加えると

ちぢ

む性質を持った、ポリスチレンなどのフィルムが使われています。

では、実験してみましょう。

 

水を入れたペットボトルの

まわ

りに、フィルムをかぶせます。それを、湯に入れます。

すると、フィルムが縮んで、ボトルにぴったりと貼りつきました。

謎3のこたえ

謎3の答え

ペットボトルのラベルには、熱を加えると縮む、プラスチックの性質が利用されていました。

謎4 どうして、リサイクルのときキャップとラベルをわけるの?

謎4

飲み終わったペットボトルの容器ようきは、どうしますか? そうですね、リサイクルですね。

リサイクルのために、ペットボトルからキャップとラベルを外します。ボトルの容器本体は、リサイクル回収かいしゅうへ出しましょう。

でもどうして、リサイクルのとき、キャップとラベルを取ってわけないといけないのでしょうか。

リサイクルは同じ種類のものを集めることが原則げんそく

ペットボトル分類別

実は、ボトル、キャップ、ラベルは、それぞれ

べつ

種類

しゅるい

のプラスチックでできています。

ボトル本体は、リサイクル可能

かのう

な「PET」です。しかしキャップとラベルは、「その他の種類」のプラスチックなのです。

 

リサイクルの大原則

げんそく

は、「同じ種類のものを集めること」です。

 

同じ種類だけのものであれば、加工

かこう

して、ふたたび素材として使うことができます。

 

しかし、

こと

なる種類がまじっていると、プラスチックの

しつ

が悪くなります。

 

ですから、分けるのです。

 

「まぜるとゴミ、分けると資源

しげん

」、というわけですね。

謎4のこたえ

謎4の答え

キャップとラベルを取らなければいけないのは、リサイクルしやすくするためです。

謎5 どうして、ペットボトルは無色透明むしょくとうめいなの?

謎5

さて、ラベルを外したペットボトルですが、なにか気がつくことはありませんか?

そう。ペットボトル本体は、みんな無色透明むしょくとうめいですね。

それは、なぜなのでしょうか?

さきほど、リサイクルの原則は「同じ種類のものを集めること」と、お話ししました。

ペットボトルが無色透明なのも、これと関係かんけいがあります。

無色透明にすればリサイクルしやすくなる

日本のペットボトルリサイクル率

ペットボトルの本体に印刷

いんさつ

したり、色をつけたりするときには、インクなどが使われます。

 

そうすると、ボトルにペット以外

いがい

成分

せいぶん

がまじってしまうことになり、リサイクルするときの質が悪くなってしまいます。

 

そこで、日本ではペットボトルを再利用

さいりよう

しやすくするため、ペットボトルはすべて無色透明にすることを、業界全体でとり決めたのです。

 

その結果

けっか

、日本ではペットボトルのリサイクルが進みました。現在

げんざい

、日本のペットボトルのリサイクル

りつ

は、世界最高水準

さいこうすいじゅん

になっています。

謎5のこたえ

謎5の答え

ペットボトルが無色透明なのは、リサイクルの質を高めるためでした。

謎6 回収された使用済みペットボトルはどうなるの?

謎6

では、回収されたペットボトルが、どのように行リサイクルされているのか、見ていきましょう。

家庭やお店などから分別して集められたペットボトルは、まとめた状態にされ、リサイクル工場へと送られます。

キャップとラベルを外すことがリサイクルに大切

キャップとラベルの外されたペットボトル

これはそれぞれ、左から自動販売機

じどうはんばいき

などのリサイクルボックス、一般

いっぱん

の家庭、そしてスーパーなどの収集

しゅうしゅう

ボックスから集められたペットボトルです。

 

スーパーなどから集められたものは、キャップもラベルも、ちゃんとはがされていますね。

 

一般の家庭から集められたものは、キャップは外れていますが、ラベルが

のこ

ったものも、少し入っています。

 

自動販売機などのリサイクルボックスから集められたものは、キャップやラベルが、そのままついたものが多いです。この段階

だんかい

で、ラベルやキャップがちゃんと取られていれば、リサイクルにかかる手間やエネルギーが少なくてすみ、環境

かんきょう

への負担

ふたん





らすことができます。

 

一人ひとりが、リサイクルについて、さらに気をつけていくことが大切です。

集められたボトルは工場でリサイクルされる

リサイクルされるボトル

集められたボトルは、ほどかれて、工場のラインへ乗せられます。

 

そして、着色されたボトル、素材が

こと

なるボトル、混入

こんにゅう

した異物

いぶつ

などペットボトル以外

いがい

のものを取り

のぞ

いていきます。

 

また、近赤外線センサーで識別

しきべつ

し、無色透明のボトル以外を、風で



ばして分けます。

 

最後には、人の手で、選別

せんべつ

最終

さいしゅう

チェックが行われます。最終チェックの後、ボトルは粉砕

ふんさい

され、

のこ

ったラベルの除去

じょきょ

が行われます。

そして、再生

さいせい

ペットボトルのフレークが作られます。

いろいろなペットボトル再利用品が作られる

再利用された製品

再生ペットボトルのフレークから、いろいろなペットボトル再利用品

さいりようひん

が作られます。

ペットボトルからリサイクルされた製品は、衣服

いふく

やプラスチック製品、ネクタイ、食品容器などがあります。

 

さらに現在では、この再生ペットボトルフレークから、再びペットボトルを作る技術

ぎじゅつ

も開発されています。

 

フレークからプリフォームをダイレクトに製造

せいぞう

するリサイクル技術は、製造や輸送

ゆそう

にかかるコストを下げ、CO2排出量

はいしゅつりょう

も、石油から製造するペットボトルよりも60%削減

さくげん

することができる、画期的

かっきてき

なリサイクル方法

ほうほう

として注目されています。

謎6のこたえ

謎6の答え

回収されたペットボトルは、いろいろなものにリサイクルされます。

それだけでなく、そして、飲料用ペットボトルにダイレクト再生することもできるようになっているのです。

このように、身近なペットボトルにも、たくさんの工夫があることがわかりました。

こんなところにも、化学の力、プラスチックの力が生かされているのです。

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