公開日:2023.02.16
更新日:2024.10.24
ポリエチレンってどんなプラスチック?やさしく解説!
プラスチックにはさまざまな種類がありますが、代表的なプラスチックはおよそ100種類あるとされています。
また、そのうち私たちの身の回りで広く使われているプラスチックにしぼると、その数は30種類ほどあるとされています。
この記事では、その中でも非常に多く使われている「ポリエチレン」というプラスチックにスポットライトを当て、その特徴や、どんな製品に使われているのかを説明します。
この記事を読んで、ポリエチレンへの理解を深めてください!
ポリエチレンってどんなプラスチック?
プラスチックの一種であるポリエチレン。英語では「polyethylene」と書きます。そのため、「PE」と略して表記されることもあります。
ポリエチレンは1898年に偶然発見されましたが、製品として実用化されるようになったのは1940年代から。
その後も研究が進み、用途に合わせてさまざまな種類のポリエチレンができるようになり、普及が進みました。
まずは、ポリエチレンとはどんなプラスチックなのかを簡単に説明します。
ポリエチレンの構造
最初に、ポリエチレンの構造を知りましょう。
プラスチックの構造を知るとき、かならず出てくるのが「モノマー」という物質です。
モノマーとは、プラスチックを構成している最小の基本物質で、「単量体
」ともいいます。
モノマーはプラスチックの種類ごとに異なりますが、ほとんどのモノマーは、水素と炭素が結びついた、簡単な構造をしている低分子化合物(少ない分子で結びついている化合物)です(例外もあります)。
そのモノマーが、いくつも重なり合うことで、高分子化合物(たくさんの分子が結びついている化合物)ができあがります。
これをポリマーといいます。このポリマーが、プラスチックの本体となります。
ちなみに、モノマーがいくつも重なり合うことを「重合」といい、ポリマーはモノマーに対して「重合体」ともよばれます。
ポリエチレンのモノマーは「エチレン」という物質で、これがポリエチレンの基礎原料となります。つまり、モノマーのエチレンが重合してできたポリマーが、ポリエチレンというわけです。
ポリエチレンの化学式と構造式
エチレンの化学式は「C2H4」で、炭素2個を持つ炭化水素です。
ポリエチレンは、エチレンの重合体で、「(C2H4)n」という化学式で表されます。
そして構造式は、このように表されます。
ポリエチレンはもっとも多く使われているプラスチックの一つ
私たちの身の回りで広く使われているプラスチックは30種類ほどあります。
その中でも、特に使われているのが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルの4種類で、「4大汎用プラスチック」とよばれています。
この4大汎用プラスチックの中でも、1、2を争うほど多く生産されているのが、ポリエチレンです。
日本におけるプラスチック原材料の生産実績のデータから見てみましょう。
2023年、日本国内で887万トンのプラスチック原材料が生産されました。そのうちポリエチレンの生産量は204万トンで全体の23%をしめています(※1)。
(※1)日本プラスチック工業連盟 統計資料 を参考に作成
ポリエチレンの原料や作り方
ここでは、ポリエチレンの原料や作り方について説明します。
プラスチックの原料は「ナフサ」
ほとんどのプラスチックは(バイオマスプラスチックなど一部の例外を除いて)、石油からできています。
地下から掘り出されたままの石油は「原油」とよばれ、真っ黒でドロドロとした液体です。
この原油を、精製プラントで加熱・蒸留すると、蒸気になります。そ気を冷やしていくと、ガソリンや灯油、軽油といった、さまざまな成分の油に分離されます。
その一つが「ナフサ」という油です。このナフサが、プラスチックの原料となります。
ポリエチレンの作り方
ナフサは液体ですが、800℃以上の高温の炉の中に送りこむと「熱分解反応」という反応を起こします。
すると、「エチレン」や「プロピレン」などのモノマーが作られます。
そして、ナフサからできたエチレンに、触媒(化学反応をすすめる物質)をまぜて、高温・高圧
で化学反応させると、エチレンが重合して、ポリエチレンができあがるのです。ポリエチレンは、エチレンの重合の方法を変えることで、「高密度ポリエチレン(HDPE)」と「低密度ポリエチレン(LDPE)」そして「直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)」の3種類のポリエチレンを作ることができます(LLDPEには、エチレン以外の成分も少し含まれています)。
ポリエチレンにはどんな特徴があるの?
ポリエチレンのもっとも大きな特徴は、加工がしやすいという点でしょう。製品を大量生産するときの材料に向いています。
また、水や油、薬品に強い(耐水性、耐油性、耐薬品性)ので、容器や包装用品の材料に向いています。
その一方で、ポリエチレンの融点(溶けて液体になる温度)は、低密度ポリエチレンで95〜130℃、高密度ポリエチレンでも120〜140℃となっています。
高密度ポリエチレンでも耐熱温度は最高110℃なので、高温の熱が発生するような途には向いていません。ちなみにポリエチレンテレフタレートの融点は約255℃、ポリプロピレンの融点は168℃です。また、接着性が悪いため、特殊な接着剤でないと接着できないのもデメリットです。
「高密度ポリエチレン」と「低密度ポリエチレン」そして「直鎖状低密度ポリエチレン」 のおもな特徴は以下のとおりです。
ポリエチレンのおもな特徴
名前 | 高密度ポリエチレン | 低密度ポリエチレン | 直鎖状低密度ポリエチレン |
---|---|---|---|
おもな特徴 | ・水に浮
く
・電気を通さない
・水や薬品に強い ・低密度ポリエチレンよりも 熱 に強い(耐 熱 温度は90~110℃) ・ 丈夫 ・白っぽく 不透明 | ・水に浮く ・電気を通さない(絶縁性) ・水や油、薬品に強い(耐水性、耐 油 性、耐薬品性) ・熱には強くない(耐熱温度は70~90℃) ・やわらかい ・ 低温 でももろくならない | ・水に浮く ・電気を通さない(絶縁性) ・水や油、薬品に強い(耐水性、耐油性、耐薬品性) ・熱には強くない(耐熱温度は70~90℃) ・低密度ポリエチレンよりも 引 っ 張 りなどの力に強い ・低密度ポリエチレンよりも熱でフィルムどうしを 接着させやすい |
ポリエチレンにはどんな製品に使われている?
ポリエチレンは、私たちの身の回りのたくさんのプラスチック製品で使われています。
高密度ポリエチレンは硬くできるので、包装材のほか、容器やタンク、管(パイプ、チューブなど)などに使われます。
低密度ポリエチレンはやわらかいので、ポリ袋やラップなどに使われます。
同じ用途の製品でも、高密度・低密度それぞれのポリエチレンの特徴があり、使い分けられていす。
たとえば、手袋です。低密度ポリエチレンで作られた手袋は、手にフィットして細かい作業に向いています。
高密度ポリエチレンで作られた手袋は、フィット感がないので細かい作業には不向きです。しかし、着けたり外したりしやすいので、使ってすに捨てるような作業に向いています。
ポリエチレンが使われているおもな製品
名前 | 高密度ポリエチレン | 低密度ポリエチレン | 直鎖状低密度ポリエチレン |
---|---|---|---|
おもな製品 | ・ 包装材 (フィルム、 袋 、食品 容器 など) ・管(パイプ、チューブなど) ・シャンプー・リンス容器 ・バケツ ・ポリタンク ・コンテナやケース ・ 手袋 など | ・ポリ袋 ・ラップ ・農業用フィルム ・ 電線 被覆 ・手袋 など | ・フィルム( 肥料 や米袋などの中に使用) ・アイスクリームなどのふた ・キャップ ・電線やケーブルの 絶縁 素材 など |
ポリエチレンのリサイクル
プラスチックは、限りある資源である石油から作られています。また、プラスチックは自然界で分解されず、ゴミとして自然界に出てしまうと、環境破壊につながります。
使い終わったプラスチックを、資源として再利用することは、私たちの未来の暮らしを守るために非常に大切なことです。
プラスチックのリサイクルの現状
廃プラスチックの中のポリエチレンの割合
2022年の国内の廃プラスチック排出量は、823万トンでした。
このうち、ポリエチレンは287万トンをしめています。これは、廃プラスチックの約35%にのぼります。
※ポリスチレン類:AS、ABS含む
出典:冊子「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況 2022年」
廃プラスチックは3つの方法でリサイクルされる
廃プラスチックのリサイクル方法は、新しいプラスチック製品(再生品)の原料として利用される「マテリアルリサイクル」、化学技術によって製品の原料にする「ケミカルリサイクル」、そしてマテリアルリサイクルもケミカルリサイクルもできないプラスチックを燃やして熱エネルギーとして利用する「サーマルリサイクル」の3種類があります。
廃プラスチックの有効利用率(3つのリサイクルの合計)は、2022年で87%となっています。
ポリエチレンとマテリアルリサイクル
上の図からもわかるとおり、2022年に排出された廃プラスチックのうち、180万トンがマテリアルリサイクルされました。
その内訳を見てみると、もっとも多くマテリアルリサイクルされているのは指定ペットボトル用のポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)で、53万トン(約30%)です。
ポリエチレンは35万トン(約20%)がマテリアルリサイクルされています。
※ポリスチレン類:AS、ABS含む
出典:冊子「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況 2022年」
リサイクルで私たちにできること
プラスチックのリサイクルは、リサイクル業者の人たちが行うことで、私たちは直接、プラスチックのリサイクルをすることはできません。
しかし、リサイクルの手助けをすることはできます。それは、使い終わったプラスチックは、住んでいるまちの分別ルールを守って、正しくごみ出しをしましょう。
リサイクルされたプラスチックは、さまざまな形で、また私たちの役に立ってくれます。
廃プラスチックの分別は「識別マーク」を参考に
ポリエチレンは、さまざまなプラスチック製品で使われています。そのため必ずしも、すべてのポリエチレン製品が資源としてリサイクルできるわけではありません。リサイクルできるプラスチック製品には、容器包装リサイクル法にのっとって、識別マークがついています。
代表的な識別マークは、ペットボトルの「PET」、ペットボトルを除くプラスチック製容器包装の「プラ」です。
リサイクルできるポリエチレンのプラスチック製品には、「プラ」の識別マークがあります。この識別マークが付いているときは、プラスチック製容器包装としてごみ分別し、資源として出しましょう。
ちなみに、100%ポリエチレンでできているプラスチック製品には、「プラ」の識別マークの下に小さく「PE」と記入されていることがあります。
出典:プラスチック、分類チャレンジ!
写真のプラスチック製品では、ボトル本体やキャップ、中栓がポリエチレン(PE)、ラベルがポリプロピレン(PP)でできていることがわかります。
そして「プラ」の識別マークがついているので、プラスチック製容器包装として資源で出すことができます。
ごみや資源の分別ルールは、住んでいるまちによって異なります。廃プラスチックをごみや資源として分別するときは、まちで出されている「家庭ごみ・資源の分別早見表」などを見て、キチンと確認するようにしましょう。
まとめ
今回は、プラスチックの中でも非常に多く使われているポリエチレンについて学びました。
私たちが普段、何気なく言葉に出している「ポリ袋」や「ポリタンク」の「ポリ」は、ほとんどがポリエチレンのことを指しています。
ポリエチレンをはじめとしたプラスチックが、私たちの暮らしを便利にしてくれていることを、この記事で知っていただけるとうれしいです。
そして、プラスチック製品は大切に使い、使い終わったものは住んでいるまちの分別ルールを守って、正しくごみ出しをしましょう。
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