公開日:2023.02.16

更新日:2023.02.17

ポリエチレンってどんなプラスチック?やさしく解説(かいせつ)

ポリエチレンってどんなプラスチック?やさしく解説(かいせつ)!

わたしたちのらしをゆたかにしてくれるプラスチック。私たちの回りには、数えきれないほどのプラスチック製品せいひんがあります。

プラスチックにはさまざまな種類しゅるいがありますが、代表てきなプラスチックはおよそ100種類あるとされています。

また、そのうち私たちの身の回りで広く使われているプラスチックにしぼると、その数は30種類ほどあるとされています。

この記事では、その中でも非常ひじょうに多く使われている「ポリエチレン」というプラスチックにスポットライトを当て、その特徴とくちょうや、どんな製品に使われているのかを説明せつめいします。

この記事を読んで、ポリエチレンへの理解りかいを深めてください!

ポリエチレンってどんなプラスチック?

プラスチックの一種いっしゅであるポリエチレン。英語えいごでは「polyethylene」と書きます。そのため、「PE」とりゃくして表記されることもあります。

ポリエチレンは1898年に偶然ぐうぜん発見されましたが、製品せいひんとして実用化されるようになったのは1940年代から。

その後も研究が進み、用途ようとに合わせてさまざまな種類しゅるいのポリエチレンができるようになり、普及ふきゅうが進みました。

まずは、ポリエチレンとはどんなプラスチックなのかを簡単かんたんに説明します。

ポリエチレンの構造

最初さいしょに、ポリエチレンの構造こうぞうを知りましょう。

プラスチックの構造を知るとき、かならず出てくるのが「モノマー」という物質ぶっしつです。

モノマーとは、プラスチックを構成こうせいしている最小さいしょう基本きほん物質で、「単量体たんりょうたい
」ともいいます。

モノマーはプラスチックの種類ごとにことなりますが、ほとんどのモノマーは、水素すいそ炭素たんそむすびついた、簡単かんたんな構造をしているてい分子化合物(少ない分子で結びついている化合物)です(例外れいがいもあります)。

そのモノマーが、いくつも重なり合うことで、こう分子ぶんし化合物かごうぶつ(たくさんの分子が結びついている化合物)ができあがります。

これをポリマーといいます。このポリマーが、プラスチックの本体となります。

ちなみに、モノマーがいくつも重なり合うことを「重合じゅうごう」といい、ポリマーはモノマーに対して「重合たい」ともよばれます。

ポリエチレンのモノマーは「エチレン」という物質で、これがポリエチレンの基礎きそ原料げんりょうとなります。つまり、モノマーのエチレンが重合してできたポリマーが、ポリエチレンというわけです。

ポリエチレンの化学式と構造(こうぞう)

エチレンの化学式かがくしきは「C2H4」で、炭素たんそ2を持つ炭化たんか水素すいそです。

ポリエチレンは、エチレンの重合体じゅうごうたいで、「(C2H4n」という化学式で表されます。

そして構造式こうぞうしきは、このように表されます。

ポリエチレンはもっとも多く使われているプラスチックの一つ

先ほど、わたしたちの身の回りで広く使われているプラスチックは30種類しゅるいほどあると書きました。

その中でも、とくに使われているのが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化えんかビニルの4種類で、「4大汎用はんようプラスチック」とよばれています。

この4大汎用プラスチックの中でも、1、2をあらそうほど多く生産せいさんされているのが、ポリエチレンです。

日本におけるプラスチック原材料の生産実績じっせきのデータから見てみましょう。

2021年、日本国内で1,045万トンのプラスチックはら材料ざいりょうが生産されました。そのうちポリエチレンの生産りょうは245万トンとなっています(※1)。

日本で作られるすべてのプラスチックのうち、実に約4分の1はポリエレンがしめているのです。

(※1)出典:日本プラスチック工業連盟「2012年~2021年 プラスチック原材料生産実績(確定値)」

ポリエチレンの原料(げんりょう)や作り方

ここでは、ポリエチレンの原料げんりょうや作り方について説明せつめいします。

プラスチックの原料は「ナフサ」

ほとんどのプラスチックは(バイオマスプラスチックなど一部の例外れいがいのぞいて)、石油からできています。

地下からされたままの石油は「原油げんゆ」とよばれ、真っ黒でドロドロとした液体えきたいです。

この原油を、精製せいせいプラントで加熱かねつ蒸留じょうりゅうすると、蒸気じょうきになります。そ気をやしていくと、ガソリンや灯油とうゆ、軽油といった、さまざまな成分せいぶんの油に分離ぶんりされます。

その一つが「ナフサ」という油です。このナフサが、プラスチックの原料となります。

ポリエチレンの作り方

ナフサは液体えきたいですが、800℃以上いじょうの高温のの中に送りこむと「ねつ分解ぶんかい反応はんのう」という反応を起こします。

すると、「エチレン」や「プロピレン」などのモノマーが作られます。

そして、ナフサからできたエチレンに、触媒しょくばい(化学反応をすすめる物質)をまぜて、高温・高圧こうあつ
で化学反応させると、エチレンが重合じゅうごうして、ポリエチレンができあがるのです。ポリエチレンは、エチレンの重合の方法を変えることで、「高密度こうみつどポリエチレン(HDPE)」と「低密度ていみつどポリエチレン(LDPE)」そして「直鎖状ちょくさじょう低密度ポリエチレン(LLDPE)」の3種類のポリエチレンを作ることができます(LLDPEには、エチレン以外の成分も少しふくまれています)。

ポリエチレンにはどんな特徴(とくちょう)があるの?

ポリエチレンのもっとも大きな特徴とくちょうは、加工かこうがしやすいという点でしょう。製品せいん大量たいりょう生産せいさんするときの材料に向いています。

また、水や油、薬品やくひんに強い(たいすいせい、耐性、耐薬品やくひん性)ので、容器ようき包装ほうそう用品の材料ざいりょうに向いています。

その一方で、ポリエチレンの融点ゆうてん(溶けて液体えきたいになる温度)は、低密度ていみつどポリエチレンで95〜130℃、高密度こうみつどポリエチレンでも120〜140℃となっています。

高密度こうみつどポリエチレンでも耐熱たいねつ温度は最高110℃なので、高温の熱が発生するようなようとには向いていません。ちなみにポリエチレンテレフタレートの融点は約255℃、ポリプロピレンの融点は168℃です。また、接着性せっちゃくせいが悪いため、特殊とくしゅな接着ざいでないと接着できないのもデメリットです。

「高密度ポリエチレン」と「低密度ポリエチレン」そして「ちょく鎖状さじょう低密度ポリエチレン」 のおもな特徴は以下のとおりです。

ポリエチレンのおもな特徴とくちょう

名前高密度(こうみつど)ポリエチレン(てい)密度ポリエチレン(ちょく)鎖状(さじょう)低密度ポリエチレン
おもな特徴

・水に
えやすい

・電気を通さない
絶縁性 ぜつえんせい

・水や薬品に強い
耐水性 たいすいせい 、耐 薬品 やくひん 性)

・低密度ポリエチレンよりも ねつ に強い(耐 ねつ 温度は90~110℃)

丈夫 じょうぶ

・白っぽく

不透明 ふとうめい

・水に浮く

・電気を通さない(絶縁性)

・水や油、薬品に強い(耐水性、耐 性、耐薬品性)

・熱には強くない(耐熱温度は70~90℃)

・やわらかい

低温 ていおん

でももろくならない

・水に浮く

・電気を通さない(絶縁性)

・水や油、薬品に強い(耐水性、耐油性、耐薬品性)

・熱には強くない(耐熱温度は70~90℃)

・低密度ポリエチレンよりも りなどの力に強い

・低密度ポリエチレンよりも熱でフィルムどうしを

接着 せっちゃく

させやすい


ポリエチレンにはどんな製品(せいひん)に使われている?

手袋

ポリエチレンは、わたしたちの身の回りのたくさんのプラスチック製品で使われています。

高密度こうみつどポリエチレンはかたくできるので、包装材ほうそうざいのほか、容器ようきやタンク、かん(パイプ、チューブなど)などに使われます。

てい密度ポリエチレンはやわらかいので、ポリぶくろやラップなどに使われます。

同じ用途ようとの製品でも、高密度・低密度それぞれのポリエチレンの特徴とくちょうがあり、使い分けられていす。

たとえば、手袋てぶくろです。低密度ポリエチレンで作られた手袋は、手にフィットしてこまかい作業にいています。

高密度ポリエチレンで作られた手袋は、フィット感がないので細かい作業には不向ふむきです。しかし、着けたり外したりしやすいので、使ってすにてるような作業に向いています。

ポリエチレンが使われているおもな製品せいひん

名前高密度(こうみつど)ポリエチレン(てい)密度ポリエチレン(ちょく)鎖状(さじょう)低密度ポリエチレン
おもな製品

包装材 ほうそうざい (フィルム、 ふくろ 、食品 容器 ようき など)

・管(パイプ、チューブなど)

・シャンプー・リンス容器

・バケツ

・ポリタンク

・コンテナやケース

手袋 てぶくろ

など

・ポリ袋

・ラップ

・農業用フィルム

電線 でんせん 被覆 ひふく

・手袋

など

・フィルム( 肥料 ひりょう や米袋などの中に使用)

・アイスクリームなどのふた

・キャップ

・電線やケーブルの 絶縁 ぜつえん 素材 そざい

など

ポリエチレンのリサイクル

プラスチックは、かぎりある資源しげんである石油から作られています。また、プラスチックは自然界しぜんかい分解ぶんかいされず、ゴミとして自然界に出てしまうと、環境かんきょう破壊はかいにつながります。

使い終わったプラスチックを、資源として再利用さいりようすることは、わたしたちの未来みらいらしを守るために非常ひじょうに大切なことです。

プラスチックのリサイクルの現状(げんじょう)

(はい)プラスチックの中のポリエチレンの割合(わりあい)

2021年の国内の廃プラスチック排出はいしゅつりょうは、824万トンでした。

このうち、ポリエチレンは279万トンをしめています。これは、はいプラスチックの約34%にのぼります。

廃プラ排出量の表

(はい)プラスチックは3つの方法(ほうほう)でリサイクルされる

廃プラスチックのリサイクル方法ほうほうは、新しいプラスチック製品せいひん再生品さいせいひん)の原料げんりょうとして利用りようされる「マテリアルリサイクル」、化学技術ぎじつによって製品の原料にする「ケミカルリサイクル」、そしてマテリアルリサイクルもケミカルリサイクルもできないプラスチックをやしてねつエネルギーとして利用する「サーマルリサイクル」の3種類しゅるいがあります。

廃プラスチックの有効ゆうこう利用率りようりつ(3つのリサイクルの合計)は、2021年で87%となっています。

ポリエチレンとマテリアルリサイクル

上の図からもわかるとおり、2021年に排出はいしゅつされたはいプラスチックのうち、177万トンがマテリアルリサイクルされました。

その内訳うちわけを見てみると、もっとも多くマテリアルリサイクルされているのは指定ペットボトル用のポリエチレンテレフタレート(PET樹脂じゅし)で、53万トン(約30%)です。

ポリエチレンは36万トン(約20%)がマテリアルリサイクルされています。

リサイクル比率

リサイクルで私たちにできること

プラスチックのリサイクルは、リサイクル業者の人たちが行うことで、私たちは直接ちょくせつ、プラスチックのリサイクルをすることはできません。

しかし、リサイクルの手助けをすることはできます。それは、使い終わったプラスチックは、住んでいるまちの分別ルールを守って、正しくごみ出しをしましょう。

リサイクルされたプラスチックは、さまざまな形で、また私たちの役に立ってくれます。

(はい)プラスチックの分別は「識別(しきべつ)マーク」を参考(さんこう)

ポリエチレンは、さまざまなプラスチック製品せいひんで使われています。そのためかならずしも、すべてのポリエチレン製品が資源しげんとしてリサイクルできるわけではありません。リサイクルできるプラスチック製品には、容器ようき包装ほうそうリサイクルほうにのっとって、識別しきべつマークがついています。

代表てきな識別マークは、ペットボトルの「PET」、ペットボトルをのぞくプラスチック製容器包装の「プラ」です。

リサイクルできるポリエチレンのプラスチック製品には、「プラ」の識別マークがあります。この識別マークが付いているときは、プラスチック製容器包装としてごみ分別し、資源として出しましょう。

ちなみに、100%ポリエチレンでできているプラスチック製品には、「プラ」の識別マークの下に小さく「PE」と記入されていることがあります。

出典:プラスチック、分類チャレンジ!

写真のプラスチック製品では、ボトル本体やキャップ、中せんがポリエチレン(PE)、ラベルがポリプロピレン(PP)でできていることがわかります。

そして「プラ」の識別マークがついているので、プラスチック製容器包装として資源で出すことができます。

ごみや資源の分別ぶんべつルールは、住んでいるまちによってことなります。廃プラスチックをごみや資源として分別するときは、まちで出されている「家庭ごみ・資源の分別早見表」などを見て、キチンと確認かくにんするようにしましょう。

まとめ

今回は、プラスチックの中でも非常ひじょうに多く使われているポリエチレンについて学びました。

わたしたちが普段ふだん、何気なく言葉に出している「ポリぶくろ」や「ポリタンク」の「ポリ」は、ほとんどがポリエチレンのことを指しています。

ポリエチレンをはじめとしたプラスチックが、私たちのらしを便利べんりにしてくれていることを、この記事で知っていただけるとうれしいです。

そして、プラスチック製品せいひんは大切に使い、使い終わったものは住んでいるまちの分別ルールを守って、正しくごみ出しをしましょう。

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