公開日:2022.12.27
更新日:2022.12.27
バイオプラスチックとバイオマスプラスチック。その違いはナニ?わかりやすく解説します!
「環境にやさしいプラスチック」として、「バイオプラスチック」というプラスチックが注目されています。
その一方で、「バイオマスプラスチック」という名前のプラスチックもあります。
名前が似ているこの2つのプラスチックは、同じものなのでしょうか。それとも、どんな違いがあるのでしょうか。
今回は、バイオプラスチックとバイオマスプラスチックとはどんなものか、2つのプラスチックの違いもあわせてわかりやすく説明します。
バイオプラスチックとはどんなプラスチックなのか?
バイオプラスチックは、簡単にいえば「環境にやさしいプラスチック」です。
一般的なプラスチックは、石油から作られています。
石油は限りある貴重な資源なので、大切に使う必要があります。
また、プラスチックは使い終わると廃棄されますが、ごみや資源として正しく回収されずにポイ捨てや不法投棄されると、分解されないごみとなり、環境破壊の原因になります。
さらに、プラスチック製品は製造するときや、廃棄されて焼却されるときに二酸化炭素を排出するのも問題です。
バイオプラスチックは、このような現在のプラスチックの問題点を改善するために開発された、プラスチックなのです。
バイオマスプラスチックとバイオプラスチックの違い
実はバイオプラスチックは、1種類ではありません。大きく「バイオマスプラスチック」と「生分解性プラスチック」の2つの種類があります。
つまりバイオマスプラスチックは、バイオプラスチックの種類のひとつ、という位置付けにあります。
バイオマスプラスチックはすべてバイオプラスチックですが、バイオプラスチックがすべてバイオマスプラスチックというわけではありません。
2つのプラスチックの大まかな特徴は、以下のとおりです。
バイオマスプラスチック
バイオマスプラスチックは、植物など生物資源から作られる「生物由来のプラスチック」のことです。原料に石油は使われません。また、分解されるものとされないものがあります。
生分解性プラスチック
生分解性プラスチックは、微生物などによって二酸化炭素と水に分解され、ごみにならないプラスチックです。生物由来の原料が使われることが多いですが、石油が原料になることもあります。
2つのバイオプラスチックの違いは、
l バイオマスプラスチック=原料が生物由来
l 生分解性プラスチック=分解される
と、いうところにあります。
図のように、バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの両方の特性
を持っているものもあれば、片方
だけの特性を持っているプラスチックもあります。
バイオプラスチックの日本での取り組み
また同年に開催された「G20大阪サミット」で、日本は2050年までに海洋プラスチックごみの追加汚染をゼロに減らすことを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を、各国の首脳と共有しました。
このビジョンの中で、今までのプラスチック製品から、バイオプラスチックなどの再生可能な製品への積極的な置きかえがよびかけられています。
プラスチック資源を守ったり、海洋プラスチックを減らすための対策として、バイオプラスチックはとても大きな存在といえます。こうした取り組みの中で、環境に優しいバイオプラスチックが注目されてきました。
国内のプラスチックメーカーでは、30年ほど前から、バイオプラスチックの研究・開発に取り組んできました。
そして2021年に発表された「バイオプラスチック導入ロードマップ」では、プラスチックのメーカーや、プラスチック製品を使うお店などに向けて、バイオプラスチックについての理解を深めてもらい、導入をうながしています。
欧州バイオプラスチック協会(EUBP)によれば、2018年の世界のバイオプラスチック製造能力は211万トンとなっています。(※1)。
一方、日本では、2018年度のバイオプラスチックの出荷量は、4万5千トンでした。
今後、バイオプラスチックのプラスチック製品は、私たちの周りにも大きく広がっていくことが期待されます。
(※1)出典:バイオプラスチック導入ロードマップ- 持続可能なプラスチックの利用に向けて - 概要3 世界のバイオプラスチック製造能力
バイオプラスチックの作り方
バイオプラスチックには、いくつかの製法があります。
ここでは、生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの両方の特徴をあわせもつ、ポリ乳酸のバイオプラスチックの作り方を紹介します。
ポリ乳酸の原料であるサトウキビやトウモロコシなどの植物から取り出されたでんぷんや
糖を発酵するなどして乳酸を作ります。
これを精製して不純物を除いてきれいにしたあと、重合(乳酸をつなげること)などの化学的な方法を使ってポリ乳酸を作ります。
では次に、バイオマスプラスチック、生分解性プラスチックそれぞれの特徴を説明します。
バイオマスプラスチックとはどんなプラスチックなのか
バイオマスプラスチックは、植物などの生物資源を原料に作られるプラスチックのことをいいます。
「生物資源」のことを英語では「バイオマス」と言うので、この名前があります。
なお、バイオマスプラスチックには、すべてバイオマスプラスチックで作られた「全面的バイオマス原料プラスチック」と、原料の一部がバイオマスプラスチックの「部分的バイオマス原料プラスチック」の2つの種類があります。
また、「日本バイオプラスチック協会が運営するバイオマスプラ識別表示制度に合格した製品には、上記の「バイオマスプラ」のマークが与えられます。
バイオマスプラスチックの特徴
バイオマスプラスチックは、石油を原料に使わず、植物を原料とすることが特徴です。
バイオマスプラスチックの原料は植物なので、貴重な資源である石油などの化石
燃料を使いません。また、あとで説明する「カーボンニュートラル」も特徴です。
ただし、生分解性プラスチックのように、自然に分解されることを目的にしているわけではないことに注意しましょう。
バイオマスプラスチックの原料
バイオマスプラスチックの原料は、主にトウモロコシやサトウキビ、トウゴマなどです。石油は使われません。
なおトウモロコシは家畜用のもので、サトウキビは、砂糖を作るときに出てくる、食用ではない「廃糖蜜」を使っています。
バイオマスプラスチックは、容器包装や繊維、電気・情報機器、自動車など多方面に使用されています。
バイオマスプラスチックは「カーボンニュートラル」
バイオマスプラスチックは、カーボンニュートラルの素材です。
カーボンニュートラルとは?
環境問題で大きな課題になっているのが、地球温暖化です。
地球の表面は、二酸化炭素などからなる温室効果ガスで覆われています。そのため、人が住める温度を一定して保てています。
しかし、温室効果ガスが増えるとガスの保温効果が高くなりすぎて、気温が上昇してしまいます。これが地球温暖化の原因です。
温室効果ガスが増えている原因は、自動車の排気ガスのほか、工場やごみ処理場などでものを燃やすとき、二酸化炭素が排出されることが大きいとされています。
ものを作ったりするときに出る温室効果ガスの排出量と、なんらかの方法で温室効果ガスを吸収する量を同じくらいすれば、トータルな見方で、温室効果ガスを出さないことを意味します。
カーボンニュートラルの考え方は、温室効果ガスの問題を解決する方法の一つとして注目されています。
バイオマスプラスチックはなぜカーボンニュートラルなのか
一般的なプラスチックは、石油から作られます。
そのため、石油の採掘からプラスチックの製造、製品への加工、そして廃棄するときの焼却など、さまざまなエネルギーを使います。その過程でたくさんの二酸化炭素を出すことになります。
それに対して、バイオマスプラスチックの原料は、植物などです。植物は栽培されているとき、光合成で二酸化炭素を吸収します。
ですから、製造するときや廃棄・焼却したときに二酸化炭素を排出しても、バイオマスプラスチックの一生の中で出る二酸化炭素の量は、プラスマイナスでゼロに近づけることができます。
また、バイオマスプラスチックは、限りある資源である石油を、原料に使いません。その点も、エコに貢献しているといえるでしょう。
生分解性プラスチックとはどんなプラスチックなのか
生分解性プラスチックは、一定の条件がそろうと、微生物などによって分解されるプラスチックです。
最終的には二酸化炭素と水になるので、プラスチックごみを出さないという特徴があります。
生分解性プラスチックの特徴
生分解性プラスチックは、分解されることを前提に作られています。
そのため、包装袋やストローなどの私たちの生活の中でたくさん消費される、使い捨てのプラスチック製品などに使われています。また、農業用の資材にも多く使われています。
また、焼却しても熱量が低いので、焼却炉の負担が少ないことも特徴です。
例えば、バイオプラスチックのポリ乳酸とポリエチレンを比較すると、ポリ乳酸よりもポリエチレンの方が、焼却時の熱量や二酸化炭素の発生量が2倍ほど多いとされています(※1)
こういった理由で、生分解性プラスチックは廃棄物処理の合理化や、海に流れ込んでしまった海洋プラスチックを減らすことなどが期待されています。
(※1)出典:NTT技術ジャーナル 2005.2
生分解性プラスチックの原料
生分解性プラスチックの原料は、でんぷんが多く含まれるトウモロコシやサトウキビなどの植物です。
ただし、石油から作られる生分解性プラスチックもあり、すべての生分解性プラスチックが植物などから作られるわけではありません。
バイオプラスチックには課題もある
バイオプラスチックは新しい素材で、まだ課題もあります。
バイオマスプラスチックの課題
バイオマスプラスチックには、一般的なプラスチック製品と比べると値段が高くなる点が課題です。
また、種類によっては耐久性や機能性が弱いといった点も課題となっています。
生分解性プラスチックの課題
生分解性プラスチックは、時間がたつと分解されることを前提に作られています。
そのため、長期間使うような製品には向かず、用途が限られるという課題があります。また、製品としての強度も強くありません。
一般的なプラスチックよりも価格が高くなるという点も、課題でしょう。
置かれている環境によっては微生物の種類や数が違うので、分解に時間がかかる場合もあります。
また、一般的なプラスチックごみをリサイクル品に再生するとき(マテリアルリサイクル)、生分解性プラスチックが混入すると、リサイクルするときに品質が落ちるとされています。
そのため、マテリアルリサイクルには不向きです。
まとめ
今回は、バイオプラスチックと、バイオマスプラスチックの違いを説明しました。
また、バイオプラスチックには他にも生分解性プラスチックというものもあり、それぞれの特徴もお分かりいただけたと思います。
バイオプラスチックは私たちの暮らしの中でも少しずつ目にすることが増えてきました。環境にやさしいバイオプラスチックを、積極的に使っていきましょう。
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