公開日:2022.12.07

更新日:2022.12.21

対策が急がれる海洋プラスチック問題。私たちにできることは?

対策が急がれる海洋プラスチック問題。私たちにできることは?

(わたし)たちの生活には、プラスチック製品(せいひん)があふれています。

コストや加工面(かこうめん)非常(ひじょう)優秀(ゆうしゅう)なプラスチック素材(そざい)ですが、その一方で、不法投棄(ふほうとうき)やポイ()てなどで廃棄(はいき)されたプラスチックごみが、環境破壊(かんきょうはかい)原因(げんいん)の一つになっているといわれています。

 

(とく)問題(もんだい)になっているのが「海洋プラスチック問題」。海に廃棄されたプラスチックごみが、さまざまな海の環境を悪化(あっか)させている原因とされています。

 

この記事(きじ)では、海洋プラスチック問題とはなにか、具体的(ぐたいてき)にどのような問題が起こっているかを紹介(しょうかい)します。

 

また、海洋プラスチック問題についてのSDGsや日本の取り組み、私たちができる海洋プラスチック問題の対策(たいさく)についても説明(せつめい)します。

「海洋プラスチック問題」とは?

海に不法(ふほう)投棄(とうき)やポイ捨てされたプラスチックごみを「海洋プラスチックごみ」といいます。

 

海岸や船の上から不法投棄で()てられたり、排水溝(はいすいこう)や川などから海に流れこんでくるなど、さまざまな経路(けいろ)でプラスチックごみは海にやってきます。

海洋プラスチックごみの流出イメージ

海洋プラスチックごみの流出イメージ

海洋プラスチックごみは年々増え続けていて、海の環境破壊を進める原因の一つとして大きな問題になっています。

 

化学物質(かがくぶっしつ)のプラスチックは、劣化(れっか)して粉々に砕けたとしても、自然(しぜん)分解(ぶんかい)されることはありません。

 

海洋プラスチックごみは、海の中にたまっていきます。

 

世界の海にはいま、すでに1(おく)5,000万トンのプラスチックごみがたまっているといわれています。

 

そこに、少なくとも毎年800万トンのプラスチックごみが流入し続けているともいわれています。

 

さらに、このペースで海にプラスチックごみの流入が(つづ)けば、2050年には、海の魚の(りょう)よりも、海洋プラスチックごみの方が多くなるともいわれているのです(※1)。

 

海洋プラスチック問題は、それほど深刻な問題なのです。

 

(※1)出典:数値は WWFジャパン公式サイト「海洋プラスチック問題について」による

海洋プラスチック問題が深刻(しんこく)な理由

海洋プラスチックには、どのような問題があるのかを4点にわけて説明します。

海洋プラスチック問題(1)海の環境破壊は見えにくい

海の表面積(ひょうめんせき)は、約3億6,000万平方キロメートルあります。地球全体の表面積は、(やく)5(おく)1,000(まん)平方(へいほう)キロメートルなので、地球の表面積(ひょうめんせき)の約70%は、海がしめています。

 

つまり海の環境破壊(かんきょうはかい)が進んでいるということは、地球全体の環境破壊が進んでいるのと同じ意味(いみ)になるのです。

 

ごみは、海中に沈んでしまうと、存在(そんざい)(かく)れてしまいます。海岸(かいがん)に流れ着いているごみは目で見えますが、海に目を向けても、ごみによって環境破壊が進んでいるようには見えません。

 

この「見えにくさ」が、問題の深刻(しんこく)さを隠してしまっています。

海洋プラスチック問題(2)マイクロプラスチック

海洋プラスチックの中でも、特に問題になっているのが、マイクロプラスチックというごみの存在です。

 

マイクロプラスチックは、5ミリ以下の大きさしかない、粒状(つぶじょう)のプラスチック(へん)のことです。

 

マイクロプラスチックには、最初(さいしょ)から小さな粒のような形で作られた「一次的マイクロプラスチック」と、自然環境の中で劣化(れっか)が進んで粒状になった「二次的マイクロプラスチック」の、2つの種類があります。

 

不法(ふほう)投棄(とうき)やポイ捨てされたプラスチックは、紫外線(しがいせん)風雨(ふうう)以外に河川(かせん)で流れるときや海の波の力でも劣化し、ボロボロになります。

 

そして次第(しだい)(くだ)かれて、(こま)かなプラスチックの粒子(りゅうし)になります。これが二次的マイクロプラスチックです。

 

最初から細かい粒子のような一次的マイクロプラスチックはもちろん、陸地(りくち)に捨てられたプラスチックのごみも、砕けて二次的マイクロプラスチックになると、雨や川を通じて、最終的(さいしゅうてき)に海に流れ込みます。

 

マイクロプラスチックは非常(ひじょう)に小さいため、いちど海に広がってしまったら、回収(かいしゅう)することはほとんど不可能(ふかのう)です。

 

(※1)出典:環境省 洗顔料や歯磨きに含まれるマイクロプラスチック問題(大妻女子大学 兼廣春之)
(※2)出典:環境省 プラスチックを取り巻く国内外の状況<参考資料集>

海洋プラスチック問題(3)海の生態系(せいたいけい)を乱す

海のごみが増えると、水質が悪くなって海の生き物が住みづらくなります。

 

また、ごみをエサと間違(まちが)えて食べてしまうと、ごみが内蔵(ないぞう)(きず)つけたり、(くだ)を詰まらせたりして、死んでしまう場合があります。

 

海洋プラスチックごみが増えると、海の生態系を乱れるおそれがあります。

海洋プラスチック問題(4)水産業への悪影響(えいきょう)

海の環境破壊がこのまま(つづ)くと、魚介類(ぎょかいるい)の数が減少し、水産業(すいさんぎょう)打撃(だげき)を受ける可能性があります。

 

また同様に、きれいな海が汚染(おせん)されると、海の観光(かんこう)業にも悪影響(あくえいきょう)がおよびます。経済的(けいざいてき)損失(そんしつ)をこうむる国や地域(ちいき)が出てくる可能性もあります。

海洋プラスチック問題とSDGs

SDGsは、「Sustainable(サステナブル) Development(デベロップメント)Goals(ゴールズ)」という英語の頭文字をとった言葉で、日本語では「持続可能(じぞくかのう)開発(かいはつ)目標(もくひょう)」という意味をもつ、世界で共通(きょうつう)の目標です。

 

世界で起こっているさまざまな問題を、2030年までに解決(かいけつ)改善(かいぜん)し、地球を未来(みらい)につないでいくために必要(ひつよう)な目標を、17の項目(こうもく)に分けて取り上げています。

 

SDGsの17の目標の中で、14番目に(かか)げられているのが「海の(ゆた)かさを守る」という目標です。

 

SDGsの取り組みが進むことで、海洋プラスチック問題も解決に向かうことが期待されています。

「海洋プラスチックごみ対策(たいさく)アクションプラン」

海に(かこ)まれた島国の日本にとって、海洋プラスチック問題は、非常(ひじょう)に身近な問題といえます。

 

それどころか日本は、海洋プラスチック問題に対して責任(せきにん)がある立場でもあります。

 

2010年の推計値(すいけいち)によると、海洋プラスチックごみの年間流出(りゅうしゅつ)(りょう)において、日本は海に面する192の国・地域(ちいき)の中で30()にランキングしています。(※1)。

 

(※1)出典:環境省 海洋プラスチックごみに関する状況

 

日本では、2018年に海岸漂着物処理推進法(かいがんひょうちゃくぶつしょりすいしんほう)施工(しこう)されました。また2019年、「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」が策定(さくてい)され、海洋プラスチック問題への取り組みが本格的(ほんかくてき)にスタートしています。

 

アクションプランでは、プラスチックの有効利用(ゆうこうりよう)前提(ぜんてい)とし、「新たな汚染(おせん)を生み出さない世界」を目指すとしています。

 

対策(たいさく)と取り組みは、以下の6つです。

対策分野主な対策・取り組み
(1)廃棄物(はいきぶつ)回収(かいしゅう)適正処理(てきせいしょり) (海のごみを回収し、正しく処理する) 国内の(はい)プラスチック処理・リサイクル施設(しせつ)整備(せいび)支援(しえん) (国内にあるプラスチックごみの処理工場やリサイクル工場の整備を支援する)
(2)ポイ捨て、流出(りゅうしゅつ)防止(ぼうし) (ゴミのポイ捨てや、ゴミが海に流れ出ることを防ぐ) 専用(せんよう)リサイクルボックスの設置(せっち)漁具(ぎょぐ)の流出防止 (プラスチックごみの専用リサイクルボックスを設置する。網など漁業の用具を海に捨てない)
(3)陸域(りくいき)でのごみ回収 (海岸などでごみを回収する) 「海ごみゼロウィーク」など全国一斉清掃(いっせいせいそう)アクションを展開(てんかい) (海岸の清掃イベントなどを全国で開催(かいさい))
(4)流出(りゅうしゅつ)ごみの回収 (海のごみの回収) 海岸漂着物(ひょうちゃくぶつ)等の回収・処理を支援、海洋ごみの回収・処理を支援 (海から海岸に流れついたごみ、海のごみの回収・処理を支援する)
(5)イノベーション (新しい技術の開発など) 技術(ぎじゅつ)開発、代替(だいたい)素材(そざい)生産(せいさん)設備(せつび)の整備・技術実証(じっしょう)を支援 (海の環境を守る新しい技術の開発、新しい設備の整備などを支援する)
(6)国際貢献(こくさいこうけん)実態把握(じったいはあく) (国際的な海の環境問題に貢献する、海の環境の実態(じったい)を調べる 廃棄物(はいきぶつ)管理(かんり)(かん)する能力(のうりょく)構築(こうちく)を支援、漂着(ひょうちゃく)物・浮遊(ふゆう)プラスチック(るい)調査(ちょうさ)等 (廃棄物の管理支援や、海のごみに関する調査に取り組み、国際的な海のごみ問題に取り組む)

海洋プラスチック問題で私たちができること

海とペットボトル

海のごみの8割は陸地からやってくる!

海洋プラスチック問題の深刻(しんこく)さがわかっても「でも、海のごみだから、私たちにはあまり関係(かんけい)ない」と思っている人はいませんか?それはとんでもないことです。

 

なぜなら、海洋ごみの(やく)8(わり)は、陸地(りくち)から流れてきたものといわれているからです。

 

私たちが何気(なにげ)なくポイ捨てをした、ペットボトルやレジ(ぶくろ)などのプラスチックごみが、排水溝(はいすいこう)や川を経由して海に流れこみ、海洋汚染を引き起こしているかもしれないのです。

 

なかでも、問題になっているのが、海に流れたプラスチックごみが、海中で(くだ)けてマイクロプラスチックになるケースです。

 

また最近では、人工芝や畑の肥料(ひりょう)カプセルなどが、川に流れ出る前にマイクロプラスチックになり、海にたどり着く場合もあります。

 

海洋プラスチック問題は、町に住んでいる人ほど「私たちにできることはなに?」と、意識(いしき)を持つことが大切なのです。

 

まずは、絶対にごみのポイ捨てや不法投棄(ふほうとうき)をしないことです。リサイクルすれば資源(しげん)になるプラスチックごみも、ポイ捨てをすれば海を汚すごみになってしまいます。

 

そして、使ったあとのプラスチック資源ごみは、住んでいる町の分別(ぶんべつ)ルールを守って、正しくごみ出しをしましょう。

 

リサイクル専門の会社によってリサイクルされたプラスチックは、さまざまな形で、また私たちの役に立ってくれます。

まとめ

海洋プラスチックは、その8割が陸地から出ています。そう聞いて、(おどろ)いた人も多いのではないでしょうか。

 

海洋プラスチック問題は、海や海に近いところに住む人だけの問題ではありません。

 

この地球に住む人がすべて、自分の問題として考え、「私たちにできることは何か」と取り組みを始めることが大切なのです。

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