公開日:2022.11.08

更新日:2022.12.20

あったらいいな!こんなプラスチック

地球にやさしいプラスチックって知ってる? 地球環境(かんきょう)問題を解決(かいけつ)する新素材(そざい)のプラスチックや情報(じょうほう)端末(たんまつ)にも利用(りよう)されている高機能(きのう)プラスチックについて紹介(しょうかい)しています。知ってびっくり最先端(さいせんたん)のプラスチック

新しいプラスチックが生まれている?

分解されて自然に帰るプラスチック

男性と女性

ここは、とある家庭のリビング。男性だんせいと女性が、リサイクルについて話しあっています。

最近さいきん、プラスチックのごみのことが問題になっているよね

うん。海のプラスチックごみの問題とか、耳にすることが多くなってきているよね

みんなが使いてをやめて、使い終わったプラスチックごみをちゃんとしょ理すれば、問題は解決するのかな…?

そう!一人ひとりの行動が、いちばん大切。でも、どんなに気をつけていても、知らないうちに使用みのプラスチックが、自然しぜんの中に、流れ出てしまうことはあるから、なかなかむずかしい問題だね

そうか〜。プラスチックは丈夫じょうぶくさらないという特徴とくちょうがあるけれど、それがぎゃくに、長い間分解されずに、環境にわる影響えいきょうあたえることになっているよね。

 

…ん、まてよ。だったら、分解されて、自然に帰るプラスチックがあればいいんじゃないかな? そうすれば、万が一、自然の中に流れ出てしまっても、いずれ自然にもどるから、ごみ問題の解決につながるかも。どう?このアイディア!

もう、あるよ!

え?

生分解性かいせいプラスチックという、自然界の生物のはたらきで、水と二さん化炭素に分解されて自然に帰るという、プラスチックが開発されているの

ほんとう?

環境にやさしい生分解性プラスチック

カップ

環境にやさしい素材そざいとして、生分解性プラスチックの開発が進められています。

たとえば、このカップには、プラスチックがコーティングされています。もし自然に流れ出たとしても、180日後には、完全かんぜんに分解される性質せいしつをもっています。

なるほど〜。生分解性プラスチック! 期待できそうだね

実は、あなたが今、もっているこのストローも、生分解性プラスチックだよ

えっ、これが??

生分解性プラスチック製のストロー

これは、植物由来の生分解性プラスチックで作られたストローです。先ほどのカップと同様に、自然界の微生物によって水と二酸化炭素にさんかたんそに分解される特徴を持っています。

 

近年、プラスチックごみの削減に取り組むホテルやレストランなどで使われることも、えてきています。

 

生分解性プラスチックなどの新しいプラスチックは、意外と身近なものになってきているのですね。

スマホの素材もプラスチック

スマホの素材

わたしたちの生活の中には、新しいプラスチックがどんどん入ってきているのよ。そのスマホだってそう!

えっ、スマホ?これも?

スマートフォンが、軽く、小さく持ち運べるのは、基盤きばんとか、フィルムとか、内蔵ないぞうバッテリーとか、かなりの部品がプラスチックでできているからなの

ええ、そうなんだ

プラスチックがなかったら、スマホも作れないってわけ

そうなんだ。情報端末じょうほうたんまつ未来みらいは、プラスチックが生み出すのかもね。ゆめが広がるなぁ。たとえば、自由に曲げられるスマホやタブレットなどがあれば、便利べんりなんじゃない?

それも、あります!

折り曲げられるスマホのディスプレイ

プラスチック素材を活用した、折り曲げができるディスプレイ

現在げんざい、プラスチック素材を活用した、折り曲げができるディスプレイの研究開発が進められています。持ち運びにも便利な、このディスプレイ。近い将来しょうらい、きっと身近なものになるでしょう。

すごいなぁ。プラスチックで、何でも作れちゃうんじゃないの?

そうかもしれないね。でもそれは、いろんな人が日々、新しいプラスチック素材の開発に取り組んでいるからなの。今日もきっと、研究をつづけているはずよ

研究者インタビュー

旭化成株式会社 高機能ポリマー技術開発センター

旭化成株式会社 高機能ポリマー技術開発センター

ここは、旭化成あさひかせい株式会社かぶしきかいしゃ、高機能ポリマー技術ぎじゅつ開発センターです。

新しい機能きのうを持った、ポリマーの研究開発を行っている研究所です。

ポリマーとは、小さな分子が集まったモノマーを、化学反応はんのうによってつなげて、とてもたくさんの分子がつながった状態じょうたいにした、高分子化合物のことです。

ここでは、どんな研究や開発が行われているのでしょうか。研究員の方にお話を聞いてみました。

高機能ポリマー技術開発センターの研究員さんに、話を聞きました。

高機能ポリマー技術開発センターの研究員さん

- どんな研究開発をしていますか?

石油からとれる原料げんりょうを使って、今までにない新しいプラスチックを作っています。

 

今までの世の中にあるプラスチックではなくて、新しい性質せいしつのプラスチックを作る研究開発を行っています。

 

研究では、フラスコの中でプラスチックの原料をまぜたりとか、温めたりとか、そういったことをして、どんな性質になるのかを毎日確認しています。

 

プラスチックは、原子同士どうしのつながりでできていますが、原子の組みえをえることで、性質や見た目を変えることができます。

 

そういったところに、とても面白さを感じていて、化学を使うと、どんなものでも作ることができる可能性かのうせいがあります。

 

その可能性に、すごくワクワクしています。

- なぜ、この仕事をえらんだのでしょうか。そして、どんな目標もくひょうを持っていますか?

医薬品の開発とか、環境問題の解決とか、1日でも早く方法ほうほうを見つけなければいけないという課題かだいがたくさんあります。

 

世の中の役にたつものを、何か作れたらいいな。その思いから、化学の会社に就職しゅうしょくしました。

 

今の目標は、自分の作った製品せいひんが世の中に出ることです。自分の研究で、人々の生活がより良くなったら、すごくすばらしいと思うからです。

 

研究を通じて、地球環境の改善かいぜんに貢献したいと思っています。

 

そして、「人々の健康けんこう快適かいてきな生活」と、「環境とのきょう生」が両立できる未来がくるといいなと思っています。

高機能ポリマー技術開発センターの研究員さん

- 化学の面白さは、どんなところにありますか?

今までにない、新しいものを作ることができるということです。化学は、とてもワクワクする、面白いものです。みなさんも化学に興味きょうみがあれば、ぜひ化学の道に進んでください。

 

化学で世の中を良くしていきたい。そんな思いで、日々研究を続けている人たちによって、新しいプラスチックが生み出されているのですね。

東レ株式会社 オートモーティブセンター

東レ株式会社 オートモーティブセンター

次にたずねたのは、東レ株式会社オートモーティブセンターです。

 

自動車がありますね。ここでは、いったい何を研究しているのでしょうか。

 

オートモーティブセンター所長、清水信彦しみずのぶひこさんに話を聞きました。

清水信彦さん

- どんな研究開発をしていますか?

東レが持っています、炭素たんそ繊維せんい樹脂じゅし(プラスチック)といった、さまざまな材料があります。これらの材料を、実際じっさいの自動車に、いろいろな形で使っていただけるように、開発・研究する部署ぶしょになっています。

 

とくにこれから、自動車は軽量けいりょう化が必要ひつようになる時代です。この軽量化のための素材、特に炭素繊維複合材料たんそせんいふくごうざいりょうを、自動車のさまざまな部品や部ざい適応てきおうさせるための研究を行っています。

炭素繊維

炭素繊維とは、石油から作られたアクリル繊維を、高温できにすることで炭化させ、ほぼ炭だけにした繊維じょうの素材です。

 

炭素繊維は、軽くて非常ひじょうつよいという特徴とくちょうを持っています。

 

その炭素繊維によって強化されたプラスチックのことを、炭素繊維複合材料(炭素繊維強化プラスチック)とび、現在では、旅客機りょかくきの機体などにも使われています。

 

炭素繊維複合材料には、どんなメリットがあるのでしょうか。

清水信彦さん

- 炭素繊維複合材料を使うメリットは?

炭素繊維複合材料は、軽くて強い材料です。これを、自動車や飛行機に使っていただくと、燃費ねんぴが良くなり、石油の消費量しょうひりょうります。

 

あるいは、電気自動車でも、電力を使う量が減ります。消費エネルギーが減ることで、かぎりある資源しげんを、子どもたち、まごの代まで存続そんぞくさせることができます。

 

はい出されるCO2(地球温暖化おんだんかガス)も削減さくげんでき、そういった観点かんてんからも、非常にすぐれた材料であるといえます。

オートモーティブセンターが開発したコンセプトカー、「TEEWAVE AR1」

オートモーティブセンターが開発したコンセプトカー、「TEEWAVE AR1」は、炭素繊維複合材料のほか、いろいろな新素材が使われています。

そのねらいは、どこにあったのでしょうか。

- コンセプトカーを開発したねらいは?

このコンセプトカーは、実際じっさいに炭素繊維複合材料(カーボンファイバープラスティック)を使ったら、車はどれぐらい軽量化できるのかを、実際に走行できる自動車で証明しょうめいすることをめざし、開発がスタートしています。

 

この車の最大の特徴は、846キログラムという重量にあります。金属きんぞくでできたふつうの自動車にくらべ、およそ50%以上の軽量化を実現しました。

10年で約(やく)10%、従来の自動車よりもCO2の排出量が削減(さくげん)さ

オートモーティブセンターの試算しさんによれば、このコンセプトカーを利用すれば、10年でやく10%、従来の自動車よりもCOの排出量が削減さくげんされます。

 

新素材で車を軽量化させることが、環境への負荷を低減ていげんするのですね。

 

では、清水さんの今の目標は、一体、どんなことでしょうか。

清水信彦さん

- 今の目標は?

最近、「空飛ぶ自動車」というものが出てこようとしています。

 

まだまだこれから先、5年、10年かかるか分かりませんが、炭素繊維複合材料や樹脂などの軽量化素材を使っていただくと、非常に高性能な、空を飛ぶ自動車が登場すると思います。

 

これはぜひ、早い時期に達成たっせいさせたいと思っております。

新しいプラスチックの研究開発をがんばっている人がいる

そうか、世の中をよくするために、新しいプラスチックの研究をがんばっている人たちがいるんだね

まだこの世の中に存在そんざいしないものを作るのが、科学の力。今、私たちがかかえているいろいろな問題も、新しいプラスチック素材が生み出されることで解決できるかもしれないね

化学ってすごいねえ

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