公開日:2023.02.17
更新日:2024.10.24
ペットボトルの原料になるポリエチレンテレフタレート(PET)をやさしく解説!
私たちの暮らしを豊かにしてくれるプラスチック。私たちの回りには、数えきれないほどのプラスチック製品があります。
その一つが、飲料水の入れものとしておなじみのペットボトルです。そのペットボトルの原料になっているのが、ポリエチレンテレフタレート(PET)というプラスチックです。
プラスチックにはさまざまな種類がありますが、代表的なプラスチックはおよそ100種類あるとされています。
また、そのうち私たちの身の回りで広く使われているプラスチックにしぼると、その数は30種類ほどあるとされています。
この記事では、ポリエチレンテレフタレートの特徴や性質、作り方などをやさしく説明します。
ポリエチレンテレフタレート(PET)ってどんなプラスチック?
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、英語では「Polyethylene terephthalate」と書きます。
そのまま書くと長いので、英語の頭文字をとって「PET(カタカナでペット)」と略されることが多いです。
ペットボトルは、この「PET」を使ったボトルだから、ペットボトルという名前なのです。
なお、「ポリエチレンテレフタラート」と書かれるときもありますが、同じものです。
ペットボトルは、他のプラスチック素材に比べると新しい素材です。1967年ごろに基礎的な技術がつくられました。
その後、アメリカで炭酸飲料のボトルに採用され、日本で登場したのは1977年のことです。
軽くて透明で、ガラスのように割れる心配がないことから、その後や液体の容器として爆発的に普及していきました。
まずは、ポリエチレンテレフタレートとはどんなプラスチックなのかを簡単に説明します。
ポリエチレンテレフタレートの構造
最初に、ポリエチレンテレフタレートの構造を知りましょう。
プラスチックの構造を知るとき、かならず出てくるのが「モノマー」という物質です。
モノマーとは、プラスチックを構成している最小の基本で「単量体」ともいいます。
モノマーはプラスチックの種類ごとに異なりますが、ほとんどのモノマーは、簡単な構造をしている低分子化合物(少ない分子で結びついている化合物)です(例外もあります)。
そのモノマーが、いくつも重なり合うことで、高分子化合物(たくさんの分子が結びついている化合物)ができあがります。
これをポリマーといいます。このポリマーが、プラスチックの本体となります。
ちなみに、モノマーがいくつも重なり合うことを「重合」といい、ポリマーはモノマーに対して「重合体」ともよばれます。
ポリエチレンテレフタレートのモノマーは、エチレングリコールとテレフタル酸、またはエチレングリコールとテレフタル酸ジメチルが反応してできたものです。
ポリエチレンテレフタレートの化学式と構造式
ポリエチレンテレフタレートの化学式は「(C10H8O4)n」です。
そして構造式は、このように表されます。
ペットボトルとして世界で使われているポリエチレンテレフタレート
私たちの身の回りで広く使われているプラスチックは30種類ほどあります。
その中でも、特に使われているのが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルの4種類で、「4大汎用プラスチック」とよばれています。
ポリエチレンテレフタレートはこの4大汎用プラスチックに加えるかたちで、「5大汎用プラスチック」とよばれることもあります。
日本におけるプラスチック原材料の生産実績のデータから見てみましょう。
2023年、日本国内で887万トンのプラスチック原材料が生産されました。そのうちポリエチレンテレフタレートの生産量は27万トンとなっています(※1)。
ちなみに生産量がいちばん多いのは、208万トンのポリプロピレンです。
ポリエチレンテレフタレートの原料や作り方
ここでは、ポリエチレンテレフタレートの原料や作り方について説明します。
プラスチックの原料は「ナフサ」
ほとんどのプラスチックは(バイオマスプラスチックなど一部の例外を除いて)、石油からできています。
地下から掘り出されたままの石油は「原油」とよばれ、真っ黒でドロドロとした液体です。
この原油を、精製プラントで加熱・蒸留すると、蒸気になります。
その蒸気を冷やしていくと、ガソリンや灯油、軽油といった、さまざまな成分の油に分離されます。その一つが「ナフサ」という油です。
このナフサが、プラスチックの原料となります。
ポリエチレンテレフタレートの作り方
ナフサは液体ですが、800℃以上の高温の炉の中に送りこむと、「熱分解反応」という反応を起こします。
すると、「エチレン」や「キシレン」などのモノマーが作られます。
エチレンからはエチレングリコール、キシレンからはテレフタル酸をつくることができます。
こうして、ナフサを原料にして作られた、エチレングリコールとテレフタル酸を化学反応させることで、ポリエチレンテレフタレートを作ることができます。
ポリエチレンテレフタレートにはどんな特徴があるの?
ポリエチレンテレフタレートは、製品に成形しやすく、曲げのばしや衝撃にも強いなど、強じん性があります。
また、薬品や油にも強く、食品を入れても安全性が高いことから、ペットボトルなどの食品容器によく使われています。
気体を通さないガスバリア性もあるので、炭酸飲料でも大丈夫です。
ポリエチレンテレフタレートは比重が水より大きいので、水に沈みます。
ポリエチレンテレフタレートの融点(溶けて液体になる温度)は約255℃です。
ちなみにポリエチレンの融点は125℃前後(種類により違います)、ポリプロピレンの融点は168℃なので、プラスチックの中では比較的高いといえます。
耐熱温度は製品の作り方によって変わりますが、ペットボトルは85℃。板状の無延伸シートは60℃、薄い延伸フィルムは200℃となっています。
ポリエチレンテレフタレートのおもな特徴
名前 | ポリエチレンテレフタレート |
---|---|
おもな特徴 | ・ 透明 ・ 強 じん 性 がある
・ガスバリア性(
気体
を
通
さない)にすぐれている
・油に強い( 耐 油 性) ・水に 沈 む |
ポリエチレンテレフタレートはどんな製品に使われている?
ポリエチレンテレフタレートには、作り方によって「ペットボトル」と「延伸フィルム」、そして「無延伸シート」の3つのタイプがあります。
ペットボトルは食品の容器などに多く使われます。
延伸フィルムは、ポリエチレンテレフタレートを薄くのばしたシート状のもので、電気を通さない絶縁材料や、各種フィルムやテープなどに使われます。
無延伸シートは、フィルムよりも厚みがあり、クリアホルダーや飲料カップ、卵パックなどに使われています。
ポリエチレンテレフタレートのおもな製品
名前 | ポリエチレンテレフタレート |
---|---|
おもな製品 | ペットボトル ・飲料やしょう油、酒 類 、お茶、飲料水などの 容器 (ペットボトル) など 延伸 フィルム ・ 絶縁 材料 ・ 磁気 テープ ・写真フィルム ・ 包装 フィルム など 無延伸シート ・食品容器 ・飲料カップ ・ 卵 パック ・クリアホルダー ・ 透明 包装 など |
ペットボトルは用途によってデザインを変えている
成形しやすいことがポリエチレンテレフタレートの特徴の一つです。その特徴をいかして、ペットボトルでは用途によって形を変えています。
たとえば、以下のようなペットボトルがあります。
・耐熱用ペットボトル
飲み物を高温で殺菌した状態で、ペットボトルにつめるようなときに使われます。ボトルが肉厚で、強度のある設計になっています。
・耐圧用ペットボトル
炭酸飲料などに使われます。内側からかかる力に強い、ロケットのようなデザインになっています。
・耐熱圧用ペットボトル
熱と圧力に強いデザインで、果汁入り、炭酸飲料などに使われます。
・無菌充填用ペットボトル
高温殺菌をせず、炭酸飲料を入れることもないので、薄く、軽く作ることができます。
ポリエチレンテレフタレートのリサイクル
プラスチックは、限りある資源である石油から作られています。また、プラスチックは自然界で分解されず、ゴミとして自然界に出てしまうと、環境破壊につながります。
使い終わったプラスチックを、資源として再利用することは、私たちの未来の暮らしを守るために非常に大切なことです。
プラスチックのリサイクルの現状
廃プラスチックは3つの方法でリサイクルされる
廃プラスチックのリサイクル方法は、新しいプラスチック製品(再生品)の原料として利用される「マテリアルリサイクル」、化学技術によって製品の原料にする「ケミカルリサイクル」、そしてマテリアルリサイクルもケミカルリサイクルもできないプラスチックを燃やして熱エネルギーとして利用する「サーマルリサイクル」の3種類があります。
2022年の国内の廃プラスチック排出量は、823万トンでした。
廃プラスチックの有効利用率(3つのリサイクルの合計)は、2022年で87%となっています。
ポリエチレンテレフタレートとマテリアルリサイクル
上の図からもわかるとおり、2022年に排出された廃プラスチックのうち、180万トンがマテリアルリサイクルされました。
その内訳を見てみると、もっとも多くマテリアルリサイクルされているのは指定ペットボトル用のポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)で、53万トン(約30%)です。
※ポリスチレン類:AS、ABS含む
出典:冊子「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況 2022年」
リサイクルで私たちにできること
プラスチックのリサイクルは、リサイクル業者の人たちが行うことで、私たちは直接、プラスチックのリサイクルをすることはできません。
しかし、リサイクルの手助けをすることはできます。それは、使い終わったプラスチックは、住んでいるまちの分別ルールを守って、正しくごみ出しをしましょう。
リサイクルされたプラスチックは、さまざまな形で、また私たちの役に立ってくれます。
廃プラスチックの分別は「識別マーク」を参考に
リサイクルできるプラスチック製品には、容器包装リサイクル法にのっとって、識別マークがついています。
代表的な識別マークは、ペットボトルの「PET」、ペットボトルを除くプラスチック製容器包装の「プラ」です。
写真のペットボトルでは、ボトル本体がポリエチレンテレフタレート(PET)、キャップはポリエチレン(PE)、ラベルがポリスチレン(PS)でできていることがわかります。
そして、「PET」の識別マークがついた本体はペットボトルとして、「プラ」の識別マークがついたキャップとラベルは、プラスチック製容器包装として資源で出すことができます。
ごみや資源の分別ルールは、住んでいるまちによって異なります。
廃プラスチックをごみや資源として分別するときは、まちで出されている「家庭ごみ・資源の分別早見表」などを見て、キチンと確認するようにしましょう。
まとめ
今回は、ペットボトルでおなじみのポリエチレンテレフタレートについて学びました。
ペットボトルが登場する前は、飲み物はガラスなどの容器に入っていたので、重くて、割れることもありました。
ポリエチレンテレフタレートでできた軽くて丈夫なペットボトルが、私たちの暮らしを豊かにしてくれていることを、この記事で知っていただけるとうれしいです。
そして、プラスチック製品は大切に使い、使い終わったものは住んでいるまちの分別ルールを守って、正しくごみ出しをしましょう。
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