公開日:2023.03.24

更新日:2023.03.24

フッ()樹脂(じゅし)ってどんなプラスチック?やさしく解説(かいせつ)

フッ素(そ)樹脂(じゅし)ってどんなプラスチック?やさしく解説(かいせつ)!

わたしたちのらしをゆたかにしてくれるプラスチック。私たちの回りには、数えきれないほどのプラスチック製品せいひんがあります。

 

プラスチックにはさまざまな種類しゅるいがありますが、代表てきなプラスチックはおよそ100種類あるとされています。

 

また、そのうち私たちの身の回りで広く使われているプラスチックにしぼると、その数は30種類ほどあるとされています。

 

この記事では、フライパンの表面をコーティングする素材そざいなど、特殊とくしゅ役割やくわりで使われることが多い「フッ樹脂じゅし」というプラスチックにスポットライトを当て、その特徴とくちょうや、どんな製品せいひんに使われているのかを説明せつめいします。

 

この記事を読んで、フッ素樹脂への理解りかいを深めてください!

フッ()樹脂(じゅし)ってどんなプラスチック?

フッ樹脂じゅしはプラスチックの一種いっしゅです。その名前のとおり、フッ素という元素げんそふくんでいるプラスチックを「フッ素樹脂」といいます。

 

フッ素樹脂は1つではなく、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)など9つの種類しゅるいがあります。

 

フッ素樹脂が発明されたのは1938年のことです。ねつに強い(耐熱性たいねつせい)、寒さに強い(耐寒性たいかんせい)、よくすべる、薬品に強い、電気を通さないなどさまざまな特徴とくちょうがあり、その特徴とくちょう利用りようして、わたしたちのまわりのさまざまな製品せいひんに使われています。

フッ素樹脂の構造

最初さいしょに、フッ素樹脂の構造こうぞうを知りましょう。

 

プラスチックの構造を知るとき、かならず出てくるのが「モノマー」という物質ぶっしつです。

 

モノマーとは、プラスチックを構成こうせいしている最小さいしょう基本きほん物質で、「単量体たんりょうたい」ともいいます。

 

モノマーはプラスチックの種類ごとにことなりますが、ほとんどのモノマーは、水素すいそ炭素たんそむすびついた、簡単かんたんな構造をしているてい分子化合物(少ない分子で結びついている化合物)です。

 

ただしフッ素樹脂のモノマーはフッ素と結びついた炭素が含まれています。

 

そのモノマーが、いくつも重なり合うことで、こう分子化合物(たくさんの分子が結びついている化合物)ができあがります。

 

これをポリマーといいます。このポリマーが、プラスチックの本体となります。

 

ちなみに、モノマーがいくつも重なり合うことを「重合じゅうごう」といい、ポリマーはモノマーに対して「重合たい」ともよばれます。

 

フッ素樹脂には9つの種類がありますが、モノマーに含まれるフッ素の数と重合方法のちがいで性質せいしつが大きく変わります。

 

ここでは、その中でも代表てきなフッ素樹脂である「PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)」について説明します。

 

ポリテトラフルオロエチレンのモノマーは「テトラフルオロエチレン」という物質で、これがポリテトラフルオロエチレンの基礎きそ原料げんりょうとなります。

 

つまり、モノマーのテトラフルオロエチレンが重合してできたポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンというわけです。

ポリテトラフルオロエチレンの化学式と構造(こうぞう)

テトラフルオロエチレンの化学式かがくしきは「C2F4」で、炭素たんそ2とフッ素4個を持っています。

 

ポリテトラフルオロエチレンは、テトラフルオロエチレンの重合体じゅうごうたいで、「(C2F4n」という化学式で表されます。

 

そして構造式こうぞうしきは、このように表されます。

構造式

ちなみに、この構造式のフッ素(F)を水素(H)にえると、ポリエチレンになります。

フッ素樹脂の年間生産量(せいさんりょう)は3万トン

先ほど、わたしたちの身の回りで広く使われているプラスチックは30種類しゅるいほどあると書きました。

 

その中でも、とくに使われているのが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化えんかビニルの4種類で、「4大汎用はんようプラスチック」とよばれています。

 

日本におけるプラスチック原材料の生産実績じっせきのデータから見てみましょう。

 

2021年、日本国内で1,045万トンのプラスチックげん材料ざいりょうが生産されました。そのうちフッ素樹脂の生産りょうは3万トンとなっています(※1)。

 

プラスチック全体の生産量からすると、わずか0.3パーセント程度ていどですが、フッ素樹脂は産業機械さんぎょうきかいなどの材料として、なくてはならないものです。

フッ素樹脂の原料(げんりょう)や作り方

フッ素樹脂

ここでは、フッ素樹脂の原料げんりょうや作り方について説明せつめいします。

フッ素樹脂の原料は「蛍石(ほたるいし)」という鉱石

ほとんどのプラスチックは石油からできています。

 

しかしフッ素樹脂は例外れいがいで、「蛍石ほたるいし」という鉱石を原料にして作られます。

 

蛍石は紫色むらさきいろ透明とうめいの色をしている鉱石ですが、ブラックライトを当てると光るという特徴とくちょうがあります。まさにホタルですね。

 

では、蛍石からどのようにフッ素樹脂を作るのかを、簡単かんたん説明せつめいしましょう。

 

まず、蛍石に硫酸りゅうさんくわえるなどして、フッ化水素すいそ(HF)を作ります。

 

次に、クロロホルム(CHCl3)と触媒しょくばい化学反応かがくはんのうを助ける薬品)を加えて、クロロジフルオロメタン(CHClF2)を作り、加熱かねつすると、ポリテトラフルオロエチレンのモノマーであるテトラフルオロエチレン(C2F4)が作られます。

 

そして、テトラフルオロエチレンを化学反応はんのうで重合させると、ポリテトラフルオロエチレンができあがります。

 

ここでは、フッ素樹脂の一つであるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)について説明しました。他の種類のフッ素樹脂も、蛍石からさまざまな方法で作られています。

フッ()樹脂(じゅし)にはどんな特徴(とくちょう)があるの?

料理

フッ素樹脂は、種類によって多少のちがいはありますが、ねつに強い(耐熱性たいねつせい)、寒さに強い(耐寒性たいかんせい)、よくすべる(すべり性)、すりりに強い(たい摩耗性まもうせい)、薬品に強い(耐薬品性たいやくひんせい)、電気を通しにくい(絶縁性ぜつえんせい)など、共通きょうつうしている幅広いはばひろい特性とくせいがあります。なお透明性とうめいせいはありません。

 

こういった特性とくせい利用りようして、過酷かこくな環境や、工作機械こうさくきかいなどの特殊とくしゅな分野に、さまざまな形で使用されています。

 

わたしたちのもっとも身近な場で使われているフッ素樹脂は、フライパンのコーティングでしょう。フライパンを使うときの悩みは、あぶらをひいても料理りょうりがこびりついてしまうことが多い点です。

 

フッ素樹脂を塗れば、料理がくっつかず、調理がしやすくなります。しかも熱や摩擦にも強いので、高温で炒め調理することが多いフライパンにはうってつけです。

 

私たちがよく耳にするフライパンのコーティングざい「テフロン」は、ポリテトラフルオロエチレンの商品名(ケマーズ社)です。

 

フッ素樹脂にもデメリットがあります。

 

くっつかない、よくすべるという特徴は、逆にいえば成形せいけいするのが難しい素材だともいえます。そのため、高い技術がないと成形しにくいことから、値段も高めになります。

 

また、たたいたりこすったりすると、はがれたり、キズが目立ちやすくなるなど衝撃しょうげきに弱いこともデメリットです。フライパンを乱暴らんぼうあつかうと「テフロンがはがれる」のは、そのためです。

フッ素樹脂のおもな特徴

主な特徴デメリットおもな用途
・耐熱性(熱に強い)。常用
耐熱温度は260℃
・耐寒性(寒さに強い)
・非粘着性(くっつかない)
・すべり性(よくすべる)
・耐摩擦性(すり減りに強い)
・耐薬品性(薬品に強い)
・絶縁性(電気を通しにくい)
・耐候性(たいこうせい)(天候(てんこう)の変化に強い)
・成形が難しい
・値段が高い
・衝撃に弱い
・透明性はない
・フライパン内面コーティング
・絶縁(ぜつえん)材料
・軸受(じくうけ)
・ガスケット
・各種(かくしゅ)パッキン
・フィルター
・半導体(はんどうたい)工業分野
・電線被覆(でんせんひふく)

フッ素樹脂のリサイクル

多くのプラスチックは、かぎりある資源しげんである石油から作られています。また、プラスチックは自然界しぜんかい分解ぶんかいされず、ゴミとして自然界に出てしまうと、環境かんきょう破壊はかいにつながります。

 

フッ素樹脂は蛍石をもとに作られるため、おもな原料が石油ではない珍しいプラスチックです。

 

それでも、ルールを守らずに不法投棄ふほうとうきされたりしてごみになり、自然界しぜんかいに出てしまうと、環境破壊につながることはわりません。

 

使い終わったプラスチックを、資源として再利用さいりようすることは、わたしたちの未来みらいらしを守るために非常ひじょうに大切なことです。

廃プラスチックの分別は「識別(しきべつ)マーク」を参考(さんこう)

リサイクルできるプラスチック製品には、容器ようき包装ほうそうリサイクルほうにのっとって、識別しきべつマークがついています。

 

代表てきな識別マークは、ペットボトルの「PET」、ペットボトルをのぞくプラスチック製容器包装の「プラ」です。

 

リサイクルできるポリエチレンのプラスチック製品には、「プラ」の識別マークがあります。

 

この識別マークが付いているときは、プラスチック製容器包装としてごみ分別し、資源として出しましょう。

プラスチック分類チャレンジ

写真のプラスチック製品では、ボトル本体やキャップ、中せんがポリエチレン(PE)、ラベルがポリプロピレン(PP)でできていることがわかります。

 

そして「プラ」の識別マークがついているので、プラスチック製容器包装として資源で出すことができます。

 

ごみや資源の分別ぶんべつルールは、住んでいるまちによってことなります。廃プラスチックをごみや資源として分別するときは、まちで出されている「家庭ごみ・資源の分別早見表」などを見て、キチンと確認かくにんするようにしましょう。

 

フッ素樹脂は、ポリエチレンやペットボトルなどのように、広く使われているわけではありません。むしろ、特殊とくしゅ用途ようとに使われているプラスチックです。

 

そのため、フッ素樹脂で分別ルールを考えるよりも、フライパンやフィルターなど、フッ素樹脂を使った製品を目安に分別しましょう。

 

例えばフライパンの場合、多くの自治体じちたいでは「資源しげんごみ」として回収されます。また、サイズの大きなフライパンは「粗大そだいゴミ」に指定されていることもあります。

まとめ

今回は、フッ素樹脂というプラスチックについて学びました。わたしたちが普段ふだん使っているフライパンがなぜこびりつかないのは、フッ素樹脂のコーティングによるものかもしれません。

 

このようにフッ素樹脂は、目立たなくても私たちの快適かいてきな生活を、かげささえてくれています。

 

フッ素樹脂をはじめとしたプラスチックが、私たちのらしを便利べんりにしてくれていることを、この記事で知っていただけるとうれしいです。

 

そして、プラスチック製品せいひんは大切に使い、使い終わったものは住んでいるまちの分別ルールを守って、正しくごみ出しをしましょう。

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