公開日:2023.02.17
更新日:2023.02.17
ポリ塩化ビニルってどんなプラスチック?やさしく解説!
私たちの暮らしを豊かにしてくれるプラスチック。私たちの回りには、数えきれないほどのプラスチック製品があります。
プラスチックにはさまざまな種類がありますが、代表的なプラスチックはおよそ100種類あるとされています。
また、そのうち私たちの身の回りで広く使われているプラスチックにしぼると、その数は30種類ほどあるとされています。
この記事では、たいへんよく使われているプラスチックの「ポリ塩化ビニル」について紹介します。
ポリ塩化ビニルにはどんな特徴や性質があり、どんなプラスチック製品に使われているのかを説明します。
この記事を読めば、ポリ塩化ビニルのことがよくわかりますよ!
ポリ塩化ビニルってどんなプラスチック?
ポリ塩化ビニルは、プラスチックの種類のひとつです。英語では「polyvinyl chloride」と書きます。そのため、「PVC」と略して表記されることもあります。
ポリ塩化ビニルを「塩ビ」とよぶ人もいます。
ポリ塩化ビニルは、1835年に開発された、長い歴史をもつプラスチックです。
開発された当時は、弱くてもろいという弱点がありましたが、1914年に改良され、加工しやすい素材になりました。
ポリ塩化ビニルは、かたくすることも、やわらかくすることもできます。また、曲げたり削ったりする加工もしやすいので、たくさんのプラスチック製品の素材に使われています。
ポリ塩化ビニルはどんなプラスチックなのかを説明します。
ポリ塩化ビニルの構造
最初に、ポリ塩化ビニルの構造を知りましょう。
プラスチックの構造を知るとき、かならず出てくるのが「モノマー」という物質です。
モノマーとは、プラスチックを構成している最小の基本物質で、「単量体」ともいいます。
モノマーはプラスチックの種類ごとに異なりますが、ほとんどのモノマーは、水素と炭素が結びついた、簡単な構造をしている低分子化合物(少ない分子で結びついている化合物)です。
ただし、ポリ塩化ビニルのモノマーは、先ほどもちらっと出てきた「塩化ビニル」です。ここの塩化ビニルは、水素と炭素に加え、塩素も結びついています。
ちなみに塩化ビニルは、ポリ塩化ビニルと区別しやすいよう、「塩化ビニルモノマー」とよばれることもあります。
モノマーが、いくつも重なり合うことで、高分子化合物(たくさんの分子が結びついている化合物)ができあがります。
これをポリマーといいます。このポリマーが、プラスチックの本体となります。
ちなみに、モノマーがいくつも重なり合うことを「重合」といい、ポリマーはモノマーに対して「重合体」ともよばれます。
ポリ塩化ビニルのモノマーは、先ほど出てきた「塩化ビニル」です。
この塩化ビニルモノマーが重合してできたポリマーが、ポリ塩化ビニルというわけです。
ポリ塩化ビニルの化学式と構造式
塩化ビニルモノマーの化学式は「C2H3 Cl」で、炭素2個と水素3個、塩素1個を持っています。
ポリ塩化ビニルは、塩化ビニルの重合体で、「(-CH2-CHCl-)n」という化学式で表されます。
そして構造式は、このように表されます。
ポリ塩化ビニルはもっとも多く使われているプラスチックの一つ
先ほど、私たちの身の回りで広く使われているプラスチックは30種類ほどあると書きました。
その中でも、特に使われているのが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルの4種類で、「4大汎用プラスチック」とよばれています。
日本におけるプラスチック原材料の生産実績のデータから見てみましょう。
2021年、日本国内で1045万トンのプラスチック原材料が生産されました。
そのうち、ポリ塩化ビニルが主成分の「塩化ビニル樹脂」の生産量は、163万トンとなっています(※1)。
ポリ塩化ビニルの原料や作り方
ここでは、ポリ塩化ビニルの原料や作り方について説明します。
プラスチックの原料は「ナフサ」
ほとんどのプラスチックは(バイオプラスチックなど一部の例外を除いて)、石油からできています。
地下から掘り出されたままの石油は「原油」とよばれ、真っ黒でドロドロとした液体です。
この原油を、精製プラントで加熱・蒸留すると、蒸気になります。その蒸気を冷やしていくと、ガソリンや灯油、軽油といった、さまざまな成分の油に分離されます。
その一つが「ナフサ」という油です。このナフサが、プラスチックの原料となります。
ポリ塩化ビニルの作り方
ナフサは液体ですが、800℃以上の高温の炉の中に送りこむと、「熱分解反応」という反応を起こします。
すると、「エチレン」や「プロピレン」などのモノマーが作られます。
そして、ナフサからできたエチレンと塩素を反応させると、塩化ビニルモノマーができます。
そして、塩化ビニルモノマーに、触媒(化学反応をすすめる物質)をまぜて、高温・高圧で化学反応させると、塩化ビニルモノマーが重合して、ポリ塩化ビニルができあがるのです。
ほとんどのプラスチックは、100%石油を原料にして作られます。それに対してポリ塩化ビニルの原料は、石油(エチレン)が約40%、塩素が約60%となっています。
ですからポリ塩化ビニルは、作るときに他のプラスチックよりも石油を使う量が少ないということができます。
ポリ塩化ビニルにはどんな特徴があるの?
ポリ塩化ビニルにはさまざまな特徴があります。
いちばんのメリットは、添加剤を使えば、やわらかくすることもでき、透明にもできるので、幅広い使いみちができることです。
また、油や薬品に強く、耐候性(風雨や日光にさらされても劣化しにくいこと)や耐久性も高いです。耐熱温度は60℃〜80℃と低めですが、燃えにくく、火元を離すと自然に炎が消えます。
さらに、曲げたり削ったりする加工や、印刷がしやすいこともメリットです。雨どいなどをつなぎ合わせるときは、表面同士を少し溶かして接着させる接着剤を使います。
ポリ塩化ビニルのおもな特徴
名前 | ポリ塩化ビニル |
---|---|
おもな特徴 | ・燃えにくい ・添加剤を加えると、硬さや透明度を変えることができる ・水に沈む ・油や薬品に強い ・電気を通さない(絶縁性) ・表面につやがあり、印刷と相性がいい |
ポリ塩化ビニルはどんな製品に使われている?
ポリ塩化ビニルは、油や薬品に強く、環境が悪くても劣化しにくい素材です。
そのため、雨風や日光にさらされる農業用フィルムや、水道管などのパイプ、建築資材、自動車部品などさまざまなプラスチック製品に使われています。
また、電気を通さず、燃えにくいことから、電気コードの被覆にも使われます。
ポリ塩化ビニルには、硬い「硬質ポリ塩化ビニル」と可塑剤を混ぜてやわらかくした「軟質ポリ塩化ビニル」の2つの種類があります。
ポリ塩化ビニルエチレンのおもな製品
名前 | ポリ塩化ビニル |
---|---|
おもな製品 | 硬質ポリ塩化ビニル ・パイプ ・継手 ・建築資材 ・フィルムやシート ・自動車部品 など 軟質ポリ塩化ビニル ・農業用フィルム ・シート ・レザー ・手袋 ・おもちゃ(ビニール人形やフィギュアなど) ・電気コードの被覆 ・消しゴム など |
ポリ塩化ビニルのリサイクル
プラスチックは、限りある資源である石油から作られています。また、プラスチックは自然界で分解されず、ゴミとして自然界に出てしまうと、環境破壊につながります。
使い終わったプラスチックを、資源として再利用することは、私たちの未来の暮らしを守るために非常に大切なことです。
ポリ塩化ビニルは、原料の半分以上が塩素なので、他のプラスチックよりは石油を使っていません。それでも、石油を使っている以上は、リサイクルの大切さは変わりません。
プラスチックのリサイクルの現状
廃プラスチックの中のポリ塩化ビニルの割合
2021年の国内の廃プラスチック排出量は、824万トンでした。
このうち、ポリ塩化ビニルを主成分とする塩化ビニル樹脂は、70万トンをしめています。これは、廃プラスチックの約9%にのぼります。
廃プラスチックは3つの方法でリサイクルされる
廃プラスチックのリサイクル方法は、新しいプラスチック製品(再生品)の原料として利用される「マテリアルリサイクル」、化学技術によって製品の原料にしたり炉の燃料に変える「ケミカルリサイクル」、そしてマテリアルリサイクルもケミカルリサイクルもできないプラスチックを燃やして熱エネルギーとして利用する「サーマルリサイクル」の3種類があります。
廃プラスチックの有効利用率(リサイクルと熱エネルギーとして利用された廃プラスチックの合計)は、2021年で87%となっています。
ポリ塩化ビニルとマテリアルリサイクル
上の図からもわかるとおり、2021年に排出された廃プラスチックのうち、177万トンがマテリアルリサイクルされました。
その内訳を見てみると、もっとも多くマテリアルリサイクルされているのはペットボトルなどのポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)で、53万トン(約30%)です。
塩化ビニル樹脂は、20万トン(約11%)がマテリアルリサイクルされています。
塩化ビのマテリアルリサイクルは、農業用ビニールハウス・フィルム、パイプ・継手、電気コードの被覆などがほとんどです。
最近は、建設資材(雨どい、壁紙、樹脂窓枠)の取り組みが始まっています。
リサイクルで私たちにできること
プラスチックのリサイクルは、リサイクル業者の人たちが行うことで、私たちは直接、プラスチックのリサイクルをすることはできません。
しかし、リサイクルの手助けをすることはできます。それは、使い終わったプラスチックは、住んでいるまちの分別ルールを守って、正しくごみ出しをしましょう。
リサイクルされたプラスチックは、さまざまな形で、また私たちの役に立ってくれます。
廃プラスチックの分別は「識別マーク」を参考に
ポリ塩化ビニルは、さまざまなプラスチック製品で使われています。そのため必ずしも、すべてのポリ塩化ビニル製品が資源としてリサイクルできるわけではありません。
リサイクルできるプラスチック製品には、容器包装リサイクル法にのっとって、識別マークがついています。
代表的な識別マークは、ペットボトルの「PET」、ペットボトルを除くプラスチック製容器包装の「プラ」です。
リサイクルできるプラスチック製品には、「プラ」の識別マークがあります。この識別マークが付いているときは、プラスチック製容器包装としてごみ分別し、資源として出しましょう。
「プラ」の識別マークがないポリ塩化ビニルのプラスチック製品は、一般的に「不燃ごみ」で分別される場合と、「燃えるごみ(可燃ごみ)」で出される場合があり、まちのルールで違います。
廃プラスチックをごみや資源として分別するときは、まちで出されている「家庭ごみ・資源の分別早見表」などを見て、キチンと確認するようにしましょう。
まとめ
今回は、プラスチックの中でも非常に多く使われているポリ塩化ビニルについて学びました。
ポリ塩化ビニルは、水道管や建築資材など、私たちの住みよい社会を支える材料に多く使われています。また、農業用フィルムなど、さまざまな産業の役に立っています。
また、手袋や電気コードの被覆など、私たちの身近でもたくさん使われています。
ポリ塩化ビニルをはじめとしたプラスチックが、私たちの暮らしを便利にしてくれていることを、この記事で知っていただけるとうれしいです。
そして、プラスチック製品は大切に使い、使い終わったものは住んでいるまちの分別ルールを守って、正しくごみ出しをしましょう。
アーカイブ