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いちばんエコなリサイクル手法はどれ?-その1─リサイクル手法を比較する方法─

サーマルリサイクルの利点もわかるけれど、
やっぱり「燃やす」より「再商品化」のほうがエコなのでは?

毎日、大量に出る廃プラスチック。環境のことを考えたら、プラスチックはなるべく作らず、使わないようにしたほうがいいと思うんだけど……

異なるリサイクル手法からは、異なる製品が生まれる

廃棄物を焼却するとCO2が排出されます。しかし、熱回収(発電など)をすることで新たなエネルギー資源の投入が抑えられ、その分のCO2排出量を削減できたと考えることができます。

一方、リサイクルの工程では新たなエネルギー資源の投入が必要であり、やはりCO2が排出されます。リサイクル製品も、いずれは役目を終えて廃棄物となり焼却処理されることによってCO2が排出されます。しかし焼却処理時には熱回収をすることによって省資源に貢献します。

異なるリサイクル手法間の環境負荷評価は簡単ではありません。家庭から排出されたあとの工程の中で、どこからどこまでを比較するかによって結果は変わってきますし、そもそも、リサイクルによって得られるものが違う手法を、単純に比べようとしても無理があります。

リサイクルによって得られる新たな製品は、リサイクル手法ごとに異なりますが、どれもが新たなエネルギー資源の投入を節約したり、環境負荷を低減するという役割を持っています。このような異なる製品を生むシステム(リサイクル手法)を公平に評価しようとするならば、評価のための「基準」が必要となります。

リサイクルによって得られる価値は、さまざまな図

なるほど。パレットと固形燃料を
直接比較するなんて、ナンセンスよね。

毎日、大量に出る廃プラスチック。環境のことを考えたら、プラスチックはなるべく作らず、使わないようにしたほうがいいと思うんだけど……
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基準を作って比較する方法

プラスチックのリサイクル手法をLCAの観点から客観的・定量的に評価するにはいろいろな方法があります。ここでは(社)プラスチック処理促進協会が容リ法のプラスチック製容器包装(その他プラ)について行った方法の一つを紹介します。

自治体によって収集された「その他プラ」について、「リサイクルしない場合」を基準に、それぞれのリサイクル手法によって得られた資源・エネルギー削減効果やCO2に代表される環境負荷の削減効果の大きさを比較する方法です。

例えば、リサイクルせず処分した場合のCO2排出量が100kgあったとして、ある手法でリサイクルすると30kgになったとします。その差70kgは、そのリサイクル手法の「環境負荷(CO2)削減効果」となります。この数値の大きさを、それぞれの手法間で比較し、評価するのです。

下の図でいうと、(a-b)と(a'-b')を比較するということです。(a-b)>(a'-b')なので、リサイクル手法Aのほうが環境負荷の削減効果は大きいということになります。

異なるリサイクル手法を比較するにはの図

具体的には何と何を比較するの?

毎日、大量に出る廃プラスチック。環境のことを考えたら、プラスチックはなるべく作らず、使わないようにしたほうがいいと思うんだけど……

まず、「リサイクルしない」というのはそのまま廃棄処分するということですが、焼却発電はするものとします(発電効率10%)。これを基準に、マテリアルリサイクルした場合、ケミカルリサイクルした場合、サーマルリサイクルした場合の3つのケースと比較します。

※発電効率10%の焼却発電を基準ケースとした理由
現在、一般廃棄物施設では焼却に伴って発生する熱の有効利用が高まっていること、また焼却発電する場合の発電効率は近年10%前後であることから、これを基準ケースとした。

このとき注意したいことがあります。

リサイクルする場合としない場合を公平に比較するためには、“機能”を同じにすることがポイントです。

機能を同じにして比較?

毎日、大量に出る廃プラスチック。環境のことを考えたら、プラスチックはなるべく作らず、使わないようにしたほうがいいと思うんだけど……
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基準との比較は、機能を合わせて

リサイクルでは、廃棄物の処理を通して何らかの新しい製品が製造されます。言い換えると、リサイクルは「廃棄物の処理」と「リサイクル製品の製造」という2つの機能を持っています。

したがって、リサイクルしない場合では「廃棄物の処理」に加え、「リサイクル製品に見合った製品の製造」という機能を設定する必要があります。

もしも、この“機能を合わせる”ことをせずに環境負荷を評価したら、最も環境負荷の低い処理方法は「埋立」ということになってしまうでしょう。

このような考えに基づいて、「その他プラ」をマテリアルリサイクルした場合としない場合のフローを表すと次のようになります。

マテリアルリサイクルした場合としない場合の図

ここでは、リサイクルしない場合(発電効率10%の焼却発電で処理)を基準としてマテリアルリサイクル(パレットに再生)した場合の例で考えてみましょう。

マテリアルリサイクルの場合、まず廃プラスチックの選別・破砕・洗浄といった処理を行い、次に再生パレットを製造するという2つの機能があります。

リサイクルしない場合では、焼却発電という廃棄物処理と、石油からの新規パレット製造という2つの機能を設定し、機能を合わせます。

パレットはフォークリフトを使った重量物の運搬に耐えられなければならないことから、パレット用の樹脂材料には高い強度が要求されます。マテリアルリサイクルによって得られた再生樹脂の強度などの品質は、当然、新規樹脂の品質に比べ劣っています。それゆえ新規樹脂は、再生樹脂に比べ強度が高い分、パレットの肉厚を薄くするなどの軽量化が可能です。

本検討では、実際のリサイクル事例を調査し、強度などの品質の差を樹脂量に置き換え、新規樹脂は再生樹脂に対し30%の量(新規樹脂代替率30%)で同じ性能を持つパレットを作ることができるという考え方で評価をしています

(次項につづく。結果については次項「LCAによる環境負荷評価の結果」をご覧ください)

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プラスチックのリサイクル20の?